大阪高校野球界の2トップ、履正社と大阪桐蔭。この2校の2005年以降の公式戦での対戦成績を見てみると、16勝6敗で大阪桐蔭がリードしている。とくに夏は、大阪桐蔭が9戦全勝と圧倒している。
しかし、今年の春、夏は、ともに履正社が優勝。この秋の府大会で履正社が優勝すると、本年度三冠達成となる。
この試合で注目されたのが、履正社の大型三塁手の安田尚憲(2年)だ。夏の甲子園でも2年生ながら4番に座ったスラッガー。ここまでの通算ホームランが40本以上。早稲田実業の清宮幸太郎が話題になっているが、西ではこの安田が注目される。体が大きく、ガッチリ体型が多い履正社の選手のなかでもひときわ大きく、恵まれた体を見るだけで魅力的な選手だ。
一方、大阪桐蔭の注目選手は、山本ダンテ武蔵(2年)だ。山本は俊足強肩の外野手。守備練習を見たところ、ポテンシャルの高さを感じた。伸びのある低い送球、いわゆるレーザービームを軽く投げる。「オコエ瑠偉(楽天)2世」と呼ばれ、注目されている。
この日の舞洲スタジアムは快晴。10月半ばでも日差しが強く、肌が痛いほどだった。準決勝の第1試合は上宮太子が初芝立命館をコールドゲームで下し、決勝進出を決めた。
第2試合の履正社対大阪桐蔭は、大阪桐蔭の先攻で試合が始まった。互いに1点ずつを取り合い、4回裏、履正社の攻撃。連続安打で2点を加えると、2死三塁から、安田の左中間フェンス直撃のタイムリー二塁打でさらに加点。4対1と履正社がリードする。
さらに6回の裏、履正社の攻撃。1死一二塁から安田が右越え3ランを放つ。外野の防球ネットに突き刺さる特大のホームランだった。
この時点で7対1。履正社が大量リードする一方的な展開となった。しかしこのまま終わらないのが、このライバル対決だ。
7回表、大阪桐蔭の攻撃。連続安打で1点を返すと、2死二塁から山本が左中間へ2ラン本塁打を放ち7対4と迫る。山本は体がそれほど大きくないが、パンチ力も備えているようだ。
しかし、試合はこのまま逃げ切った履正社が勝利。決勝戦へと駒を進める。安田は2打数2安打4打点3四球で全ての打席で出塁した。一方の山本も5打数3安打2打点の好成績を残した。
翌日の決勝戦は、上宮太子と履正社の対戦。大阪桐蔭を破った勢いで履正社が勝つかと思われたが、高校野球は何が起こるかわからない。2回、上宮太子が5連続安打で5点を奪う。さらに3回も4点を奪い勝負を決めた。
上宮太子の先発、森田輝(2年)は履正社打線を3失点に抑え完投。変化球とストレートのコンビネーションでタイミングをはずし、履正社打線を翻弄。8つの三振を奪った。17年ぶりの優勝を果たした上宮太子は、近畿大会でも注目されるだろう。
秋の大阪府大会を見て、新しいヒーローが出現しそうな予感にワクワクした気持ちになった。また、一冬を越して選手達が、来春にはさらに成長した姿を見せてくれるのか思うと、楽しみで仕方がない。
秋季近畿大会は10月22日より紀三井寺球場(和歌山)で開催される。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
大阪在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。