セ・リーグのクライマックスシリーズは、レギュラーシーズンを制した広島が勝ち抜き、シリーズMVPには田中広輔が選出された。ファイナルステージの4試合で12打数10安打、打率.833。加えて四球での出塁も5回あり、17打席でなんとアウトは2回だけ。歴史的な好成績で文句なしの受賞だった。
そして、惜しくもCS敗退となった巨人とDeNAにも、目立った活躍を見せ、「敢闘賞」に値する選手がいる。両チームからひとりずつ選んでみたい。
巨人の「敢闘賞」は坂本勇人だ。3試合で2本塁打を含む12打数6安打の打率.500。今季、スタメン出場した131試合はすべて3番を打った坂本だが、CSでは3試合とも1番。それでも難なく対応し、ヒット量産だけでなく四球も2個獲得。出塁率.571と、急造ながらリードオフマンとしての働きを十分に果たした。
レギュラーシーズンでは打率.344というキャリアハイの打率を残し、首位打者の栄冠を射止めた坂本。セ・リーグのショートでの首位打者は史上初の快挙だった。本塁打も23本で、6年ぶりに20本オーバー。この12月に28歳となるが、今まさに脂の乗り切った時期を迎えたといっていいだろう。
一方、DeNAの「敢闘賞」には、ケガを押してグラウンドに立ち続けた梶谷隆幸を挙げたい。13打数5安打と当たっていたエリアン、4試合に登板し3セーブと試合を締めた山崎康晃の活躍も光ったが、やはり印象度では梶谷に軍配が上がる。
ファーストステージ第3戦の1打席目に死球で左手薬指を骨折した梶谷。その試合こそ途中で退いたが、2日後から始まったファイナルステージでは、全4試合でフル出場を果たした。
骨折した左手薬指は、小指と束ねてがっちりテーピング。打席では、左手は添えるだけのような場面もあったが、ここ一番ではしっかり両手でのフルスイング。第3戦では貴重な追加点となるタイムリーを放ち、第4戦でも追撃の2ランをライトスタンドに運んだ。
さらに、テーピングのため薬指と小指を入れる部分を改造したグラブで臨んだ守備でも、第3戦でフェンス際のファウルフライをダイビングキャッチしてみせるなど気持ちのこもったパフォーマンス。このビッグプレーには、敵である広島ファンからも大声援が送られたほどだ。
シリーズを通してチームの士気を高めた梶谷の功績は計り知れないものがあった。
ちなみに、坂本と梶谷は同じ1988年生まれ。2006年秋の高校生ドラフトで指名され(坂本は1巡目、梶谷は3巡目)、プロ入りしている同期生だ。ベテランと呼ぶにはまだ早い年齢だが、チームでは、坂本が主将、梶谷が選手会副会長という立場を任されており、ナインを引っ張る立場でもある。
今季、CSには進出できた巨人とDeNAだが、ペナントレースでは優勝した広島に20ゲーム近く離された。来季、巻き返しを図るためには、この両選手の活躍は不可欠だ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)