高校時代は愛工大名電高で甲子園に3度出場。最速142キロ左腕として活躍し、立命館大に進む道を選んだ。
大学進学後、さらにスピードアップを遂げ、現在の最速は152キロ。左腕でここまで球速があると「ノーコン」の先入観を抱いてしまうが、東の最大の武器はコントロール。ストレートに加えて、スライダー、ツーシーム、チェンジアップ、カーブなど多彩な変化球を低めに集める投球が身上だ。
公称170センチとやや小柄だが、78キロの体重があり、数字以上に大きく見える。
東の投球で特に光るのは安定感だ。関西大学リーグでの成績を見てみよう。
■東克樹:関西学生リーグでの成績
2014秋:8試合/2勝0敗/投球回23/防御率0.39
2015春:7試合/1勝3敗/投球回22.2/防御率2.38
2016春:6試合/3勝1敗/投球回41.2/防御率0.65(MVP獲得)
2016秋:7試合/5勝2敗/投球回52/防御率1.38
2017春:7試合/5勝2敗/投球回57/防御率0.47
2017秋:4試合/2勝1敗/投球回25/防御率1.08
(2015秋は故障のため登板なし、2017秋は10月9日時点)
221.1回を投げ、219奪三振、四死球はわずか39個。大学時代の今永昇太や濱口遥大は乱調もあったが、東は試合を壊さず、剛柔自在に相手を翻弄する。歴代の大学球界でも指折りの安定感だ。
安定感がありつつも能力のマックス値も高い。2016年春のリーグ戦で京都大を相手にノーヒットノーランを達成しており、さらに今春には関西大を相手に自身2度目のノーヒットノーランを成し遂げている。
関西大戦では、四球は初回のひとつだけであとは走者すら許さず。17三振を奪う快投で球速も自身初の150キロ超を記録した。
夏には日米大学野球、ユニバーシアードで日本代表に選出。4試合に先発し、27投球回で40奪三振、5四死球、自責点0の結果を残している。関西の大学野球は関東に比べてややレベルが落ちると言われるが、大学日本代表で主戦に躍り出た。
秋のリーグ戦も4試合で2完投1完封の波のない投球を見せている。3年生の時点で安定感はずば抜けていたが、今年に入ってさらに頭二つ飛び抜けてきた。
プロ側の食い付きでは阪神や楽天がいい。10月10日のリーグ戦では11球団40人が集結し、阪神は8人、楽天は6人のスカウト団をつぎ込んだ。ヤクルトも小川淳司新監督が直接視察。今季、不調に終わったベテランエース・石川雅規の後継にはピッタリの逸材だ。
関西大学野球を代表する大エース・東。間違いなくドラフト1位で消えるだろう。先発に難を抱える球団が、一本釣りしても何ら不思議ではない!
文=落合初春(おちあい・もとはる)