トレーニング技術や体調管理法などの進歩により、年々、選手寿命が延びているプロ野球。山本昌や工藤公康は例外だとしても、アラフォー選手は今や珍しくなくなっている。
その上で、これまでに培ってきた経験や技術も武器になるのだから、若手が追い抜けないのも無理はない。若手がだらしないのではなく、ベテランが凄すぎるという表現が正しいだろう。
そんなまだまだ働き盛りのアラフォー選手だが、特にプレーを目に焼き付けておきたい5人を紹介したい。
今年で39歳になる福留は、メジャーリーグから復帰した2013年シーズンこそ不調であったが、年々成績を上げ、昨季はほぼフル出場で、20本ものホームランを打った。
このホームランの内容がまた素晴らしい。20本中14本が「勝ち越し」や「逆転」などが付く殊勲打というもの。勝負強さでは、チームどころかリーグでも右に出るものがいない、抜きん出た存在感を放った。
松井の守備位置と言えばショート。メジャーリーグではセカンドもこなしていたが、歴代のプロ野球ベストナインを選ぶ企画でも、他の名手を差し置いて必ず名前が挙がる。そんな松井が、外野手登録でシーズンを迎えるなど、誰が思っただろうか。
外野へのコンバートは、一昨年からショート以外のポジションにも挑戦し始める中で、自ら望んだことだったそう。目的は、選手寿命を延ばすため。そこには、1日でも長くプロ野球選手でいたいという「プロ野球愛」がうかがえる。
昨季は主に、右翼手で出場してエラーは3つ。刺殺は内川聖一(ソフトバンク)に次ぐリーグ8位と、本職顔負けの守備を披露した。40歳にしてこの適応力、そしてこの野球センス。残り少ない現役時代に直接その目で見て、肌で感じておかなければならないだろう。
昨季、山本昌を始めとしたベテラン勢が球界を去ったことで、今季から最年長プレーヤーとなったハマの番長・三浦。昨季は、23年連続勝利となる白星を挙げ、ランキング1位タイに浮上。山本昌や工藤公康と肩を並べたが、今季はその更新に期待がかかる。
そしてもう1つ、番長には忘れてはならない記録がある。それはバッターとしての記録だ。23年連続で打ち続けている安打記録の継続だ。投手も打席に入るセ・リーグだからこそのロマン溢れる記録。投手だけに絞ったランキングでは、番長はもちろんトップなのだが、打者を含めても5位タイに位置している。
ロッテが誇る井口&福浦も、チェックしておきたいベテラン。先に挙げた選手たちのような派手な活躍はないものの、常に一軍に帯同し、スタメン・代打も関係なく堅実に試合に出続ける。まさにチームの縁の下の力持ちという存在だ。
それぞれの立ち位置は、チームの応援歌からもうかがえる。井口はミスターロッテ・初芝清の背番号6を受け継いだことで、「6番背負った男の心意気 今こそ見せろ」と声援が送られている。一方で福浦は、地元・千葉出身ということから、「俺達の福浦」「千葉の誇り胸に」とのエール。途中加入、生え抜きと立場が違っても、貢献度の高いベテランへのファンの信頼は厚い。
井口は今季で42歳、福浦は41歳になる。しかし、まだまだ歩みを止めるわけにはいかない。1億8000万円という高額年俸をもらいながら、それに見合う成績が残せていない井口はもちろんだが、福浦も2000本安打が88本と迫ってきている。ここ何年かの成績を見ると、今年だけでは達成は難しいかもしれないので、来年・再来年へと繋げるためにも、今季は大事なシーズンとなるだろう。
それぞれがどんな結果を残しているのか、秋が気になるところだ。
アラフォーまで生き残った選手は、自分で引退時期を選ぶことができる。そのため、ファンが「まだできる」と思っていても、突然、何の前触れもなしに引退を決めることがある。だからこそ、見られるときにそのプレーを見ておくことが必要だ。
YouTubeでも見ることはできる。しかしそれはプレーであって、ベテランが放つオーラや空気感までを伝えてはくれない。しかしそれこそが、本当にファンがほしいものだと思う。
この5人の他にも、贔屓のチームに頑張るベテランがいたら、若手以上に目を凝らして見ておこう。もしかすると、今見ているピッチングや打撃が、最後のプレーになるかもしれないのだから(年俸は推定)。
文=森田真悟(もりた・しんご)