迫りくる世界一奪還の戦いを目前にして、再び顕在化しているのは、滑りやすく抜けやすいWBC使用球の問題である。
小久保裕紀監督が就任した2013年10月以降、数多くの国際試合を経験した。しかし、WBCと同じローリングス社製の使用球を用いて戦ったのは、2014年11月の日米野球と、昨年11月にメキシコとオランダを迎えた強化試合のみ。壮行試合や親善試合を含めても11試合、イニング数にして100回にとどまる。
昨年の強化試合では、野村祐輔(広島)が1試合で3被弾。千賀滉大(ソフトバンク)は伝家の宝刀のフォークの制球に四苦八苦。武田翔太(ソフトバンク)もマネーピッチのカーブが決まらないなど、第1回大会から指摘され続けてきた使用球へのアジャスト問題が、再び露呈するかたちとなった。
そんななか、WBC使用球でまだ1人の打者の出塁すら許していない投手が2人いる。昨秋に2試合・1回2/3で打者5人に投げてピシャリ抑えた宮西尚生(日本ハム)。そして、もう1人が則本だ。
楽天のエース・則本は日米野球の第3戦で先発。ロビンソン・カノー(マリナーズ)、エバン・ロンゴリア(レイズ)らを擁するメジャー選抜を向こうにまわし、5回無失点。6奪三振を含む「打者15人連続アウト斬り」の快投。西勇輝(オリックス)、牧田和久(西武)、西野勇士(ロッテ)とともにノーヒット・ノーランリレーの立役者になった。
ストレートは最速155キロ、変化球が高めに抜けることは数えるほど。低めゾーンにキレよくしっかり集め、10個の空振りを奪った。ストライク率は63.3%と合格点の数字。ストライク先行の組み立てで、フォアボールで歩かせることはなかった。
昨オフの契約更改で、則本は3年の複数年契約を結んだ。その契約には、満期を迎える2019年オフに、ポスティングを利用したメジャー移籍について球団と話し合いのテーブルに着く条項も盛り込まれた。視野の先に新たなステージをとらえた則本にとって、今回のWBCは絶好のショーケース。当然、期するものがあるはずだ。
WBC使用球の不安が少なく、燃えるピッチングに期待が高まる則本を、小久保監督がどんな起用をするのか。その采配に注目したい。
文=柴川友次
楽天に関するありとあらゆるデータの収集を標榜する、鷲ファンきってのデータマン&野球ブロガー。各種記録や指標等でイーグルスの魅力・特徴を定点観測する有料メルマガは、まぐまぐスポーツ・アウトドア有料版ランキングで常時TOP10入りする支持を集めている。