今春、日本全国を覆った新型コロナウイルス禍。まだまだ予断を許さない状況だが、緊急事態宣言が解除され、ようやく「最後の夏」への希望の光が差し込んできた。
あらためて、高校野球界の現状をおさらいしたい。
5月20日、日本高野連は今夏の甲子園中止を正式に発表した。春夏続けて全国が中止になる事態に、全国各地の高野連は次々と「独自大会」の開催を発表。東北地区では各県代表を集めた独自の東北大会を開催することが決まっている。
ほとんどの都道府県ではトーナメント制での実施が決まっているが、細かいルールは都道府県によって異なる。その中でも目立つのは「試合ごとのメンバー入れ替え可」や「ベンチ入り人数増」の特別ルールだ。一人でも多くの3年生にベンチに入ってもらいたいという配慮が見られる。
また思い切ったルール変更を決めた地区もある。埼玉県、京都府は「7イニング制」での大会開催を発表した。練習不足に加え、熱中症の懸念もある現状では、英断といえるのではないだろうか。
医療現場がいつ逼迫するかわからないこの状況で「熱中症ゼロ」は高校野球全体における今夏のテーマになる。7、8月の気候はまだわからないが、熱中症続出となれば、世論は厳しくなるだろう。9イニング制での開催を決めている都道府県も今一度、7イニング制を検討してもいいのではないだろうか。
夏の甲子園の中止は決まったが、6月10日、日本高野連はセンバツ出場予定だった32校を甲子園に招待し、各校1試合ずつの交流試合を行うことを発表した。
1試合だけとはいえ、センバツ中止で涙をのんだ高校球児にとっては朗報だ。プロ注目の選手たちにとっても貴重なアピールチャンスになる。
7月8日にオンラインで抽選会が行われ、組み合わせが決まる予定。1試合だけということもあり、どんな対戦カードになるのか、いつも以上に注目を集めることになりそうだ。
日本学生野球協会とNPBの合意により、6月1日よりNPBのスカウト活動も再開されている。各地で解禁された練習試合にスカウトも足を運んでおり、一気にドラフトへの動きも出始めている。
しかし、現状のスカウト活動は、やはりドラフト戦線における「特注」の選手が中心との声も聞こえてくる。一方、本来であれば当落線上の3年生は大学進学、社会人入りへと舵を切り、大学、企業への顔見せも盛んになっている。
NPB側は夏の代替大会のスカウト活動について高野連に打診中とのことだが、保護者でさえ入場の制限が検討される中で線引きは極めて難しい。大学、社会人野球の関係者も頭を悩ませていることだろう。
指導者の人脈だけに頼らず、オンラインでの試合映像配信など、アピールの場を作ることも大人ができる公正への配慮になるのではないだろうか。
文=落合初春(おちあい・もとはる)