クライマックスシリーズ(以下CS)導入には賛否両論あったものの、戦力不足が否めない球団や、何年も優勝から遠ざかった球団にとっては間違いなく“刺激”を与える制度であり、チームの順位が自らの契約更改に影響を及ぼす選手たちにとって、CS進出争いをかけた試合はやはり目の色が変わるというものだ。
今年のプロ野球ペナントレースも、競馬でいうと第四コーナーをまわったあたりか。連日連夜、野球で飯を喰う“プロ”たちがしのぎを削り、何とか3着以内に入線するよう、必死で勝負している。これまで、今シーズンのプロ野球は間違いなく面白かったが、目の色が変わってくる今はさらに面白い試合が続いているように思う。
その最後の直線を必死に駆け抜けるのが選手たちならば、鞍上で手綱をさばくのが“監督”だ。どんな手を使ってでも、クビ差でもハナ差でもいいから3着以内にチームを滑り込ませる…。春先から始まった長丁場のペナントレース、監督たちの手綱さばきで順位が決まるといっても過言ではない。
毎日のプロ野球関連のニュースから「旬」な話題を厳選して、鋭く、素早く斬り込む「プロ野球やじうまジャーナル」。第1回目はCS争い真っ只中だからこそ敢えて斬り込みたい、12球団監督たちの去就問題にクローズアップ。来季の監督人事に影響を及ぼす9月のCS争い。そういった目線で試合を観戦するのも面白いだろう。
【セ・リーグ編/巨人・阪神以外は全員クビ? 予断を許さない他球団の監督人事】
「年中行事」ともいえる巨人の監督去就問題。今年は早くも7月中旬に巨人・渡辺恒雄球団会長が“続投”を示唆するコメントを発表。今季の成績をふまえると2年契約が切れる来季も原監督が“続投”する方向で決まりだろう。
注目は今年5月に国民栄誉賞を受賞した松井秀喜のコーチ就任は本当にあるのか。その辺りは今オフの話題になりそうだ。
シーズン中に“不倫メール問題”がスッパ抜かれるなど、野球以外で苦労した感もある和田監督。本業のほうは何とか2位をキープしてCS出場は達成できそうだ。就任時に3年契約を結ぶも、最終年は球団側に選択権のあるオプション契約だったが、球団側も今季の健闘を認めており、来季の続投が決定的だ。
予断を許さないのが広島。昨年は夏頃には「野村監督は(2013年も)続投」とチラホラ聞こえていたが、今年は夏を過ぎてもそのような声は聞こえてこない。就任した2010年〜12年まで3年連続で借金10以上を計上。今季のCSに進出して大きなインパクトを残さないと、来季の続投は厳しいのでは…。
中日もある意味、予断を許さない。内部事情は不明だが、?木監督は今シーズン途中に退任が“内定”したという不思議な状況だ。後任監督候補は今のところ2011年に二軍監督を務め、翌年から一軍打撃コーチを務める井上一樹が有力らしいが、ミスタードラゴンズ・立浪和義の名もあがっている。
◎DeNA/中畑清監督(2012〜:2年契約の2年目)
昨季最終戦終了後に「来シーズンCSに出場できなかったらクビ」と明言してしまった中畑監督。逆にいえば今季にCS進出すれば“続投”の目があるということだ。7月末にはDeNA・春田オーナーが契約延長を示唆。“続投”すれば中畑監督と同じ駒澤大のOBでもある森繁和の投手コーチ就任も噂されている。いずれにせよCS進出なるか? は興味深いところだ。
こちらも来季の続投は微妙だ。今季の低迷は、監督の手腕云々よりも、余りにも多く続出したケガ人の影響が大きいだろうと、小川監督を擁護する声もあると聞く。1年契約が切れる来季の“続投”はあるのか。後任監督候補として、引退を表明した宮本慎也、一時代を築いた池山隆寛、荒木大輔などの名があがっているが、さて…。
【パ・リーグ編/混沌を極める今シーズン! 監督の去就も波乱含みか?】
その星野監督だが、8月22日にKスタを訪れた楽天・三木谷オーナーから直接、来季の続投を正式要請された。「シーズン中なので」という理由で正式な回答はまだ行っていないが、球団創設初優勝が決まる頃と同時に「星野監督、来季も続投決定」という見出しがスポーツ紙に踊るかもしれない。
こちらも続投が既定路線だ。球団側からは7月中旬には本人に伝えられているという。2007年以来の現場復帰にも関わらず好成績を収めたのは、その間もTV解説や評論家として活動し、WBCの日本代表ヘッドコーチを務めるなどして、日本のプロ野球をよく勉強していた結果といえるだろう。
2009年に3年契約で監督に就任した秋山監督は、2011年にリーグ連覇と初の日本一を達成。その年のオフ、年数は公表されなかったが3年間の複数年で契約を延長し、来季がその最終年にあたる。就任して5年目の今季までリーグ優勝2回、日本一1回、交流戦優勝3回と立派な成績を残していることから、来季の続投も固い。
実は昨年、最後の最後まで揉めたのが渡辺監督と球団側だ。補強の面も含めてフロント側との軋轢があったようだが、渡辺監督自身が「悩んだが、やり残したことがある」と球団側の続投要請を受諾した。しかしながら今年は不思議と“続投”の声が聞こえてこない。5年間で2008年の日本一を含むAクラス4度と、安定した成績を残してきたが…。
来季が契約最終年ということもあり、栗山監督は“続投”だろう。自身と同じくコーチ経験がなかった黒木知宏投手コーチと大塚光二守備走塁コーチを配置し、ヘッドコーチには高校野球部の監督だった阿井英二郎を組閣に加えるなどサプライズ首脳陣で挑んだ今シーズン。果たして来季も同じ陣容でいくのかも注目だ。
オリックス・西名球団社長が9月4日の試合前に“続投”を要請。2年契約の2年目となる来季に向けて、森脇監督もそれを快諾したという。今季は期待を裏切った格好になってしまったオリックスだが、来年はオリックス本社の創業50周年ということもあり、巻き返しを狙っている。
注目はDeNA・中畑監督と西武・渡辺監督の去就について。ともに熱血漢だけに、契約交渉中の感情的なもつれなどで「どんでん返し」が起きる可能性があるのでは…と思っている。
他にも中日や広島、ヤクルトなどは、これからも続々と監督候補の名前があがってくるだろう。選手にとってはもちろん、ファンにとっても監督人事は気になるところ。CS争いや日本一争いと並行して、注目していきたい。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。”ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite