2015年もあと1カ月を残すのみ。ストーブリーグが本格化するこの時期、毎年恒例行事となりつつあるのが、メジャー移籍直訴だ。
一昨年の田中将大(楽天→ヤンキース)や、昨オフの金子千尋(オリックス残留)が、メジャー移籍を球団に直訴したのは記憶に新しい。そして今年も、広島のエース・前田健太が昨年に引き続き、2年連続でポスティングでの渡米意向を球団に伝えた。
日本でも屈指の好投手がメジャー挑戦を改めて表明したニュースは、本人よりも一足先に、海を越えてアメリカに伝わっている。
CBSスポーツの電子版は11月24日付で、前田の日本での成績や昨年の日米野球で登板した際のハイライトを紹介している。さらに「優れたスライダーとコマンド(※)があり、先発4番手としては申し分ない」という匿名の球団幹部のコメントを紹介。FA市場ではデビッド・プライスやザック・グレインキーといったトップクラスの投手に次ぐクラスのオプションになるだろう、と書いている。
※コマンドとは、捕手が構えたミットに投げ込めることを指す。ちなみに、アメリカでコントロールというと、単純にストライクがとれるかどうかを指す。
CBSよりさらに深く踏み込んでいるのは、統計分析の第一人者を多数抱えるウェブサイトFanGraphs。2つの記事に分けて前田を分析し、最初の記事では日本での成績や、2013年のWBC準決勝で登板した際のボールの変化軌道や回転数などから、比較対象となる投手を模索。その結果、元ブレーブスの川上憲伸と、今季フィリーズでメジャーデビューを果たしたルーキー、アーロン・ノーラの2人の名前を挙げている。
もう一つの記事では、年齢や実際のメジャーリーグでの成績といった要素も考慮し、上記の投手たちよりも前田に近いであろう比較対象2人をそれぞれ下限、上限として紹介。前田の実力が、下限として選ばれたレッドソックスのリック・ポーセロと同じくらいだった場合、5年6590万ドル(約81億円)に値するとしている。
一方、上限として選ばれたのは先日、タイガースと5年1億1000万ドル(約135億円)で合意したジョーダン・ジマーマン。前田も5年で1億2780万ドル(約157億円)という金額がふさわしいと報じている。
最終的には両者の中間をとり、6年1億500万ドル(約129億円)と予想。そのうち20万ドルがポスティングフィーとして広島に支払われるのが最も妥当な契約であると結論付けた。つまり、前田の実際の取り分は8500万ドル(約104億円)となる。
海の向こうでも注目度が増しているマエケンの動向。MLBチームが実際に着けるプライスタグは一体いくらなのか。その答えを知るためにも、エースのポスティング直訴に対するカープ側の一刻も早い回答が待たれるところだ。
文=山崎和音(やまざき・かずと)
日本プロ野球はもちろん、メジャーリーグや各国の野球の試合を毎日観戦。さらにシーズン中は、高校野球の地方大会などにも足を運ぶ。複数の米ウェブサイトにも寄稿しているほか、海外の野球ファンとの交流も積極的に行っている。