1999年に長崎県で生を受けた増田。「宝物」という意味を持つ「珠」を「しゅう」と読ませる名前を与えられた男児は、小学生の頃はソフトボールをプレー。中学進学と同時に父や先輩の影響を受けて長崎リトルシニアへ入団し、硬式野球の道に進む。
長崎リトルシニアで中堅手兼投手として頭角を表すと、2014年の侍ジャパンU-15日本代表の主将に選出。15Uワールドカップで4番を打ち、大会通算打率.556という好成績を残した。
中学卒業後の進路は、「子どもに夢を与えられるプロ野球選手になる」という夢をかなえるため名門・横浜高を選んだ。
侍ジャパンU-15日本代表の輝きは横浜高に入っても鈍ることなく、1年春からベンチ入りし、夏の神奈川大会では全試合に中堅手として出場。1年秋に故障したこともあり、初めて甲子園の土を踏んだのは2年の夏。神奈川大会から7試合で打率.440、甲子園でも2試合で打率.500とあらためて「横浜高に増田あり」を知らしめた。
その後も壁を乗り越え、成長した姿を見せた。3年夏は神奈川大会で打率.600、大会新記録の4試合連続を含む5本塁打の活躍でチームを再び聖地に導く。甲子園では1回戦で秀岳館に破れたものの、3打数1安打と気を吐いた。
そして、甲子園直後のWBSC U-18ベースボールワールドカップでも、3位決定戦で2安打を放つなど要所で活躍。銅メダルとはいえ、またひとつ勲章を増やしてプロの門をくぐろうとしている。
「高卒でプロに挑戦」という観点で、増田をブレイクさせてくれそうな球団を想像すると、真っ先に思い浮かぶのは広島だ。
絶好調・赤ヘル軍団の外野は、丸佳浩(千葉経済大付高卒)、鈴木誠也(二松学舎大付高)といった高卒の選手がレギュラーとなっている。「高卒外野手の育成で成功している球団」として、増田をよい形で成長させてくれると期待感が高まる。
折しも広島の外野手の最年少は24歳の鈴木誠也。そこに、将来の外野の軸も期待できる増田を獲得すれば、さらに明るい展望が開けるだろう。
現状、広島は夏の甲子園で脚光を浴びた強打の捕手・中村奨成(広陵高)を「お膝元出身のスター候補」ということで1位指名しそうな気配だ。ただ、丸、鈴木と続いた「高卒外野手ブレイクの流れ」があることも、頭に入れておきたい。
最後に、増田がプロで目指してほしい選手像を挙げたい。先述した「高卒外野手」の流れを汲むと丸が理想像となる。ともに中堅手で、将来的には増田も3番を打つ選手に成長してほしいと思っているので、まさにうってつけのお手本だ。
ちなみに丸も小学生時代にソフトボールをしていた。冗談めいた話ではあるが、そんな共通点もあるのなら、もう広島に行って丸の後を継ぐしかない。
また、ソフトバンクのある福岡ほどではないが、広島なら出身地である長崎にも近い。親孝行、そして故郷に錦を飾る思いで、彼の地の野球熱をさらに高めてほしいと願う。
文=森田真悟(もりた・しんご)