野球は後攻有利とよくいわれる。プロ野球では本拠地の利も重なり、5割3分前後は後攻チームが勝つといわれるが、高校野球でもまたしかり。「有利不利なし説」に果敢に挑戦するファン、学者もいるが、卓上ではなく、グラウンド上の実戦データではやはり後攻が少し有利だ。
2015年夏までの甲子園決勝を統計してみると、先攻42勝・後攻53勝。後攻の勝率が.558に達していた。数学的には収束にはまだ遠い段階かも知れないが、現時点では大きな開きが出ていた。
したがって、作新学院は先攻不利の現状を打ち破って、全国制覇を達成したことになる。それでもまだ後攻の勝率は.552だ。
ちなみに春の甲子園決勝はこれまで先攻も後攻も44勝ずつ。夏に限っては後攻が強いというデータになっている。
「延長に入れば裏の攻撃の方がプレッシャーを与えられるので有利だ」
後攻有利説支持者がよく理由として挙げるのがこれだ。しかし、夏の決勝で、延長戦で勝負が決した試合を見ると、先攻チームの6勝4敗。ここまでは先攻に優位性があるようだ。
また、夏の甲子園決勝で圧倒的な差が存在するのは、初回にリードを奪った場合の勝率だ。
初回終了時点でリードを奪ったチームは26勝5敗。リードを奪ったのだから、勝利に結びつきやすいのは当然とはいえ、勝率.839は驚異的だ。1回表裏の攻防は優勝の行方を占う大きなポイントといえるだろう。
今夏の決勝は両投手ともに初回にランナーを許したものの、後続をしっかりと抑え、圧倒的に不利な状況になる事態を阻止した。
もちろん、96回のデータでは測りきれないことが多い。しかし、こうしたデータを考えた上で見る甲子園の決勝は一味違う。来夏は先攻が勝つのか後攻が勝つのか。特異なデータになるのか、データ論的な収束へ向かうのか、俯瞰で見る甲子園決勝もなかなか面白い。
文=落合初春(おちあい・もとはる)