昨シーズン途中、菊池雄星(西武)が試合中に審判から指摘を受けたことでクローズアップされた二段モーション。しかも開幕直後ではなく、後半戦だったことからも物議を醸した。その騒動の広がりやメジャーリーグや国際大会での変則的フォームが容認されている背景を踏まえ、今シーズンから二段モーションが解禁。多くの投手がフォーム改造に乗り出した。
菊池は二段モーションを利用したフォームで開幕戦に挑み、日本ハム打線を7回2失点、8奪三振と結果を出した。もちろん、二段モーションでなくとも昨シーズン後半も好成績を残しているだけに、その実力は疑いようもない。神経をすり減らしていた点がなくなれば、心の余裕が生まれて、ますます手をつけられなくなりそうだ。
また、菊池のチームメートでもある十亀剣も二段モーションを解禁。今シーズン初先発となった4月3日のソフトバンク戦では、菊池と同じく7回2失点の好投。開幕4連勝に貢献した。
一方、過去を振り返ると二段モーションが厳格化された2006年に苦しめられた投手がいる。三浦大輔(元DeNA、当時横浜ベイスターズ)もそのひとりだ。
三浦は2005年に自己最多の12勝をマークし、最多奪三振(177奪三振)、最優秀防御率(防御率2.52)を獲得した。しかし、二段モーションが禁止となった2006年は、新フォームが馴染みきらず、投球回数こそ2005年の214回2/3を超える216回2/3を記録したものの、8勝(12敗)、防御率3.45、160奪三振と成績を落としてしまう。
その後、“一段モーション”のフォームにアジャストした三浦は、2007年には11勝(13敗)、36歳を迎えた2009年にも11勝(11敗)と2ケタ勝利をマーク。そして、2016年まで現役を続け「ハマの番長」として親しまれた。
また、岩隈久志(マリナーズ)も2006年は苦しいシーズンとなった。創設間もない楽天のエースとして戦っていた岩隈だが、この年はフォームのリズムがつかめず、さらに右肩痛の影響もあり、わずか1勝(2敗)に終わってしまう。
しかし、フォームが固まった後の2008年は21勝4敗、防御率1.87と圧倒的な成績を残し、沢村賞を受賞。その後はメジャーリーグに渡り、2017年終了時点で日米通算170勝と200勝まであと一歩。ルールの変更から苦しんだ末のさらなる栄誉を勝ち取りたいところだ。
メジャーリーグでは「チャレンジ」としてすでに導入されていたビデオ検証。日本では「リクエスト」という名称で今シーズンから採用されている。これまではホームラン時に限られていた映像による検証が、そのほかのプレーでも適用可能となった。開幕3連戦を終えた時点では、大きなトラブルもなく運用されている。このルールでも悲喜こもごもあるだろう。いずれにせよ、正確なジャッジで試合が進んでほしいところではあるが……。
申告敬遠はリクエスト以上に賛否両論が起こっている。いち早く申告敬遠が導入されたアメリカでは、イチロー(マリナーズ)が「元に戻した方がいい」と発言している。
しかし、投手陣は申告敬遠を喜んでいるだろう。昨シーズン、敬遠するために外したルーキ(元ヤクルト/現ドゥランゴ・ジェネラルズ[メキシカンリーグ])の投球が暴投となり、失点したケースがあった。また、4球もボール球を投げることで、次打者との対戦で手元が狂う可能性もある。このようなリスクが減るのはありがたいはずだ。初の適用は開幕戦で、投手は石田健大の場面でラミレス監督(ともにDeNA)が行った。石田はその後の打者を打ち取り、申告敬遠は吉と出た。申告敬遠直後の打者は準備する時間が短くなるが、それが打撃に影響するかもしれない。
近年行われた大きなルール変更にはコリジョンルールがある。2016年に捕手の保護を目的として、導入された。公式戦における初の適用は捕手ではなく、投手の高橋光成(西武)だった。暴投した球を捕手が追い、本塁ベースカバーに入った高橋光が走者と交錯。ビデオ判定の後に、アウトからセーフへと判定が覆った。
捕手はキャンプから練習を行っていたが、投手含む内野手は、それほど意識していなかったはずだ。投手が適用第一号となるのは、予想外の出来事だった。
コリジョンルールの適用で、故意の危険なタックルによる本塁突入はなくなり、捕手の危険性は減少したが、走路をあけるために本塁の前に立つことで追いタッチになりやすくなったり、送球を捕りに行った結果、走者と重なった場合にルールは適用されるのか適用されないのか判断が難しかったり、新ルールに対応するための試行錯誤は続いていく。
今後も時代とともにルールの変更が行われていくだろう。試合時間短縮に関するもの、選手の危険から身を守るものと目的は様々だ。ルールの変更によりどのようなことが起こるのか、選手たちはどう対応していくのかをしっかりと見届けていきたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)