若き真打ちの1人目は「おかわり君二世」として入団した山川穂高。
昨季は49試合で14本塁打を放ってブレイク。今季は開幕スタメンをゲットしたものの、思うように活躍できず、4月いっぱいで2軍落ちの憂き目に。
しかし、1軍復帰した7月8日のロッテ戦で代打本塁打を放つと、その後は6番・一塁を定位置に1試合3本塁打をやってのけるなど、13連勝の立役者となった。
その後、打順が5番に定着したと思った矢先、8月20日の日本ハム戦でついに4番の座に就く。「元祖おかわり君」中村剛也が不在とはいえ、入団時から「いつか……」と思っていた西武ファンの筆者は感慨もひとしおだった。
西武は中村がブレイクした2008年に日本一になっている。それだけに「おかわり君二世が躍進した年にも優勝を」と期待せずにはいられない。
2人目は山川と同じ富士大出身の多和田真三郎。2015年のドラフトで、「近未来のエース候補」として1位指名された右腕だ。多和田が故障を抱えていることをわかった上での獲得だった。
多和田は1年目から7勝5敗と勝ち星が先行。防御率は4点台と手放しで褒められるものではなかったが、郭泰源(引退)、松坂大輔(現ソフトバンク)、涌井秀章(現ロッテ)と歴代のエースが着けてきた背番号「18」を預けられるルーキーが現れたことは、チームにとって朗報だと感じた。
ただ、今季は開幕ローテーションを任されたものの、4月は4戦で0勝2敗。期待に応えられず、ファーム行きとなる。
変化があったのは1軍に再登録された初戦、6月28日のロッテ戦だった。故郷の沖縄で行われたこの試合で何かをつかんだのか、7月10日のロッテ戦から3連勝を記録。
自身初の4連勝がかかった試合は、チームの14連勝もかかった8月5日のソフトバンク戦。ここでは打ち込まれてしまったが、続くロッテ戦と日本ハム戦で自身初の2試合連続完封勝利をやってのけた。
こうして5勝2敗と盛り返してきたわけだが、昨季も8月以降に8戦5勝(1敗)と調子を上げてきたので、暑い時期の方が得意なのかもしれない(沖縄生まれでもあるだけに)。
上位争いのプレッシャーのなかで成績を残した今季の投球は、間違いなく成長の証。もともとの素質に経験が加わった今こそが、真三郎の真の姿だ。
3人目は……すでに実力を見せつけている選手ではあるが森友哉を挙げたい。3月5に行われたWBCの強化試合(キューバ戦)で骨折してから、ようやくの復帰となった。
1軍に登録された当日、8月15日の楽天戦にDHで出場すると、第1打席にあいさつ代わりの打点つき安打。そして翌日には早くも今季第1号を放つなど、あらためてケタの違いのポテンシャルを見せた。
「手術でなく保存療法を選んだことでここまで復帰が伸びた」と言われていたが、メヒアが不調をこじらせ、中村も体調が思わしくないという状況に陥った今となっては結果オーライ。
普通なら2人の大砲を欠いて勢いを失うところだが、今季に関しては森がいる限りそれはないと確信している。遅れてきたヒーローが、西武特急に最後まで走り切るエネルギーを与えてくれるはずだ。
今季も残すところあと34試合。「ここまできたら鷲を、そして鷹までも撃ち落としてほしい」という気持ちが日に日に膨らんでいる。
待望の正遊撃手・源田壮亮をはじめ仕事をしている選手はたくさんいるが、やはりこの3人がラストスパートの機運を高めているからだろう。
山川のくだりでも少し触れたが、2008年の日本一は中村のほか、栗山巧、中島裕之(現宏之、オリックス)、片岡易之(現治大、巨人)ら若手の台頭があってこそ成し得たものだった。
今季は2008年に雰囲気が非常によく似ている。球団史に残る大まくりを見せて、プロ野球の歴史に名を刻め!
(成績は8月22日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)