高校時代の西田は評判の「5ツールプレイヤー」。プロでも注目のプロスペクトだった。
関大一高時代は甲子園出場こそないものの、4番打者として高校通算37本塁打、112盗塁。右打ち、俊足強打の遊撃手として鳴らし、公式戦にはプロ12球団の大半が、スカウトを視察に送り込むほどだった。
2009年ドラフトで、楽天から球団史上2例目の「高卒野手2位指名」を受けてプロ入り。将来を嘱望された逸材だった。
プロ5年目の2014年、ファームで順調に力をたくわえた西田にチャンスが巡ってくる。体の負担を考慮し、松井稼頭央が三塁、外野での出場を増やしたタイミングで抜擢されたのだ。この年、正遊撃手として131試合に出場し、415打席で打率.250、41打点、7本塁打をマーク。レギュラー定着の足掛かりとするに、ふさわしい数字を残した。
初球から積極的に打って出るスタイルが印象的。自慢の長打力も披露。西勇輝(オリックス)から中越えの二塁打を2本放ち、増井浩俊(日本ハム))の151キロを打ち返して左中間フェンス直撃の二塁打にするなど、目覚ましい槍働きを見せた。しかしこの後、伸び悩んでしまう。
順調な成長を見せた西田にとって痛すぎたのは、2015年のケガ。久米島キャンプで左足甲を骨折してしまうのだった。このケガで出遅れた西田は復帰後も調子が上がらない。4度の登録抹消を繰り返し、自慢のバットでも62試合、183打席で打率.220、8打点、1本塁打と低迷する。
登録名を「哲朗」に変更し、仕切り直しで臨んだ2016年も精彩を欠いた。遊撃の定位置争いで新人・茂木栄五郎に屈し、出場数はわずか11試合。21打席で打率.100、1打点、1本塁打という、プロ2年目以降ではワーストの1軍成績に終わる。
この間、バットを寝かせたり立てたりトップの位置を頻繁に変更したりと、打撃フォームの試行錯誤も続いた。
三好匠ら下の世代の成長も著しい。しかし、西田が持つ1軍・2軍通算1963打席の経験と、2014年に見せた活躍は財産だ。コンディションを整え、迷いをなくし、打撃フォームを固めることができれば、紆余曲折を辿った経験が肥やしになり、2014年から停滞したままの成長曲線を、ふたたび上向きに描くことができるだろう。
内野レギュラー陣は今江年晶、藤田一也が30代半ば。適度に休養を挟みながらの起用になるはずだ。そのときこそ、西田の活躍が必要になる。
チームでも1、2を争う人気者。昨年のバレンタインではチーム最多のチョコをゲットした。それだけに、復活を期待するファンの声は根強い。
今はまさに「崖っぷち」に立っているが、ファンの声に応えるべく、カクテル光線のなか、ふたたび羽ばたき、新たな物語を紡いでほしい。
文=柴川友次
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