掛布2軍監督が1軍から降格してきた上本博紀を、初めて4番打者で起用したのは、4月29日のオリックス戦であった。
これまで1番や2番で起用されることが多かった上本を、「常にいい緊張感を持たせたい」と4番に起用し思い切りのいい打撃を引き出したのだ。
技術的なこともさることながら、メンタルな部分を4番起用という形でケアする、掛布2軍監督ならではの育成方法。期待に応えた上本は「4番の仕事」をきっちりこなし、再度1軍昇格を成し遂げる。
開幕からブレイクした横田慎太郎も、1軍から掛布2軍監督の元に送り返されてきた1人だ。
1軍では、投球を当てにいって、足で稼ぐ安打が目立ち、横田の持ち味であるパワーを生かしたバッティングはさせてもらえなかった。
「4番としての責任を負わす」
掛布2軍監督の願いは、横田らしさを取り戻させ、再度1軍で横田の本当の魅力をファンに魅せることに他ならない。
掛布2軍監督のファンサービスは、過去に例をみないほどサービス精神旺盛だ。
ファーム開幕戦では、監督カードと呼ばれる550枚の掛布2軍監督プロフィール写真に直筆サインをし、鳴尾浜球場に詰め掛けたファンに1枚1枚手渡しでプレゼントした。もちろん、掛布2軍監督の写真は満面の笑み(掛布スマイル)である。
また、ゴールデンウイーク3連戦が、自身が2軍監督となって初の甲子園開催だったこともあり、ここでもフロントを巻き込んでのファンサービスを慣行。2軍戦では異例の毎試合1万人の入場者を記録した。
多くのファンにプレーを見てもらうことで、1軍昇格を狙う選手たちが発奮してモチベーションが上がり、より高いところを目指すようになる。
「ファンが選手を育てる!」
掛布2軍監督の意図するところは、まさにここにある。
現役を引退後、野球以外で波乱万丈の人生を歩んだ掛布2軍監督。人生のどん底を味わったからこそ、見えてくることもある。
掛布2軍監督が見せる満面の笑みは、野球ができることの喜びが満ち溢れ、指導する真剣な表情からも、愛弟子たちが1軍で活躍し、将来大きく羽ばたくことを願う気持ちが伝わってくる。
阪神フロントをも巻き込んだ“超変革”が、掛布2軍監督の元でも着実に進んでいるのは間違いない。ファンの心をしっかりと掴んでいる掛布2軍監督が今後は何を見せてくれるのか、楽しみにしたい。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。