今年、日本ハムではFA権を取得する選手が多数存在する。注目は4番・中田翔だ。昨オフは契約更改で複数年契約を蹴り、単年の2億8000万円でサイン。しかし、今季はここまで打率.239、10本塁打、得点圏打率.225とやや苦しんでおり、球団としては「売り時」の決断になりそうだ。
また守護神・増井浩俊とセットアッパーの谷元圭介もFA権を取得。増井は年俸2億2000万円、谷元は年俸1億円。両者ともになくてはならない存在だが、FA補償で増井はAランク、谷元はBランクとされており、どちらも移籍となれば人的補償を得られる。これまでの日本ハムのチーム構成の遍歴を見ると、強気の交渉に打って出る可能性は低くないだろう。
さらには大谷翔平にもメジャー手形を出しており、こちらも早ければ今オフにメジャー移籍が決まるかもしれない。
さすがに全員流出という事態はないだろうが、日本ハムファンは相応の覚悟が必要だろう。
FAやポスティングで臨時収入があったとしても、それが新たな選手補強に繋がる可能性は少ないだろう。
現に2011年オフにダルビッシュ有がレンジャーズに移籍し、約40億円のポスティングマネーを手にしたときは、旭川市に2億円を寄付し、旭川スタルヒン球場のナイター照明設置を後押ししたほか、2軍・鎌ヶ谷の設備充実など多くをインフラに投資した。
「目先よりも将来」というのが日本ハムの一貫した経営姿勢だ。
また、新球場建設計画も“貯金”の大きな要因になるだろう。札幌ドームの球場使用料の問題などで実質的な赤字である以上、“新しい箱”が整うまでは散財はできない状況だ。
戦力面、補強面では今後数年は厳しいやりくりになりそうだが、自前の球場が完成する、もしくは札幌ドームの使用条件が見直され、単独黒字化されれば、今のように「渋い」と言われることもなくなるだろう。
チームの勝敗は借金を重ねているが、未来への貯金を作っている。北海道移転から培ってきた育成力は、すでに大きな財産だ。球団にとってもファンにとっても我慢の時期となりそうだが、この山を乗り越えれば、今とは違った日本ハムが顔を見せそうだ。
(成績は7月28日現在)
文=落合初春(おちあい・もとはる)