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嗚呼バティスタ…。荒波の果てに首位・巨人の背中に肉薄も…。ワタシ、あの時広島の優勝をあきらめました

文=井上智博

嗚呼バティスタ…。荒波の果てに首位・巨人の背中に肉薄も…。ワタシ、あの時広島の優勝をあきらめました
 リーグ4連覇を目標に掲げて挑んだ広島の2019年のペナントレースは、結果として4位でシーズンを終えた。

 思えば序盤から大型連敗、大型連勝を繰り返し、ジェットコースターのようなシーズンだった。その2019年のシーズンで「こりゃあ優勝は無理だな」、そう感じた瞬間を広島ファンである筆者の独断で考察してみたい。

安定感を欠いたシーズン


 過去3年はほかを寄せつけない圧倒的な強さでリーグ優勝を飾ってきた広島だったが、今シーズンは著しく安定感を欠いた。

 開幕から連敗と連勝を繰り返し、交流戦では最下位。8年ぶりの2ケタ連敗(6月28日のDeNA戦から7月10日の中日戦までの11連敗)まで喫してしまうなど、近年の強さとはあまりにもかけ離れた広島の姿に、今年は優勝できないかも…と感じていたファンも多いはず。

 しかし、ダメかと思うと、息を吹き返して勝ちだすものだから、なかなか優勝をあきらめる気にもなれなかったのもまた事実。特に7月19日から21日には首位・巨人を相手した3連勝を皮切りに9連勝。最大12ゲームまであったゲーム差を1.5ゲームまで縮めたときには、逆に優勝だろうと勘違いしたほどだ。

 そんな絶望と希望が交錯したシーズンだったが、追撃ムードが高まる8月17日、優勝の希望を無残に書き消すショッキングなニュースが紙面を踊った。

まさかバティスタが…


「バティスタ、ドーピング検査で陽性反応」

 FAで巨人に移籍した丸佳浩の穴を補う活躍を見せていたのがバティスタだ。8月16日まで打率.269、64打点、チームトップの26本塁打を放ち主軸として活躍。チームが大型連勝を記録した5月は打率.352、10本塁打、21打点と、その原動力たる大活躍を見せた。

 しかし、「バティスタの調子が広島の勝敗を左右する」と言われるほどチームにとって無くてはならないキーマンが勝負所で離脱。この事実はチームにとって計り知れない影響を与えた。

 離脱の理由はドーピング。戦力ダウンもさることながら、チームからドーピング違反の選手が出てしまったこと。それがバティスタだったことのショックもまた、チーム、ファンへ暗い影を落とした。

 というのも、バティスタはメジャーリーグから入団した助っ人外国人ではない。ドミニカカープアカデミーの練習生から育成契約を経て入団した、いわば自前で育てた「広島」の選手だからだ。そのため強い思い入れを抱くファンも多い。記事などから伝え聞く明るい性格と勤勉な姿勢を含め、あのバティスタがまさか…と、筆者を含め落胆するファンは数多くいた。

 本人も述べているように、意図的に摂取したものではないかもしれない。しかし、禁止とされている成分が検出された以上、本人は当然ながら、球団そのものもダーティなイメージを持たれてしまうのは必然だ。

 選手が離脱するダメージより、むしろ「不祥事」を起こしてしまった事実。それこそが、筆者にとって優勝をあきらめさせる強い要因であった。

期待のドミニカ勢が不発


 その暗い影を引きずったまま迎えた8月17日のDeNA戦。仮にこの日、バティスタショックを払拭させるような勝ち方ができれば、まだ望みは持てるかもしれない。不祥事で冷めた気持ちに再び火を着けるには熱い勝利しかないのだ!

 そんな大事な一戦の先発はバティスタに変わって昇格してきた、こちらもドミニカカープアカデミー出身のモンティージャ。そして、打線の注目はスタメンに名を連ねたこちらもアカデミー出身のメヒアだ。彼らドミニカンの活躍こそがバティスタショックをいち早く忘れさせてくれる特効薬である! そう信じた試合結果は…。

 力不足か、気持ちが空回ったのか、初回から制球の定まらないモンティージャは2回5失点でKO。メヒアは気合いのヘッドスライディングで出塁を試みるなど、バティスタの穴は自分が! という気概はうかがえたが、この日は1安打。気持ちは伝わったが穴を埋めるほどの活躍はできなかった。

 ドミニカン2人だけでなく、チーム全体に停滞ムードが漂うこの日の広島。終盤に抵抗を見せるも3対8で惨敗。バティスタショックを払拭するどころか、優勝の2文字が完全に消え去った敗戦であった。

それでも来年はまた期待できる!


 その後の広島は優勝争いから姿を消し、最終的には70勝70敗3分けの4位でシーズンを終えた。3連覇からまさかのBクラス落ちとなり、厳しい批判を浴びる結果となった。

 しかし、2年連続MVPの丸が抜けたこと以外にも、不動のリードオフマン・田中広輔やクローザー・中崎翔太の大不振など、様々なマイナス要素がありながらの5割は批判より、むしろ称賛すらされてもいい結果だったと考える。

 苦しみながらも5割を残せたことで広島の地力は証明された。来シーズンはどうだろう? ポスティングによるメジャー挑戦を表明した菊池涼介が抜ければ、その穴は果てしなく大きいだろう。しかし、順調に若手が育てば戦力的にはこれからが充実期に入る。

 ここでまた暗黒時代に逆戻りとなるか、はたまた新しい黄金時代を築くことができるのか? 来シーズンこそ“特に”広島に注目したい。

文=井上智博(いのうえ・ともひろ)

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