地方大会の熱き戦いを経て、甲子園出場校が決まった。夏の高校野球といえば、“個人”にスポットライトを当てたニュースも魅力のひとつ。今夏、地方大会で注目を集めたプロ野球選手の弟を紹介しよう。
東兵庫大会では面白い対決があった。準々決勝で相見えたのは、報徳学園と長田。1対0のロースコアで報徳学園が勝利を手にした。
敗れたものの、この試合で2安打を放ち、気を吐いたのは長田の一塁手・田村拓也だ。実はこの田村は、報徳学園時代に「スーパー1年生」として甲子園デビューし、立教大を経て西武に入団した田村伊知郎の弟なのだ。
そして何といっても「文武両道」は兄・伊知郎の代名詞でもある。報徳学園に進学が決まった後も勉学に励み、トップクラスの成績で報徳学園に入学したことは、兵庫県内で語り草となっているエピソードだ。
その田村伊知郎の弟が県内屈指の進学校である長田の選手として登場。思わずニヤリとしてしまった。
今年の“弟”たちは“兄と違い”の一文がつくことが多かった。岩手大会準優勝の盛岡大付では、同校のOBでソフトバンク・松本裕樹を兄に持つ松本跳馬が才能の片鱗を見せた。右腕の“兄と違い”サウスポーの好素材。この夏は公式戦初完封も記録し、スケールの大きい左腕に成長した。
栃木大会に登場したのは、田嶋大樹(オリックス)の弟・田嶋俊輔(佐野日大)。兄とそっくりなフォームで注目を集めたが、左腕の大樹に対し、こちらは右腕だ。
その佐野日大を破り、8年連続で夏の甲子園出場を決めたのは作新学院。2年生でレギュラーを張る遊撃手・石井巧の兄は、石井一成(日本ハム)だ。左打ちの兄に対し、巧は右打ち。栃木大会準決勝では値千金のサヨナラ弾を放っている。
南神奈川大会では小笠原慎之介(中日)の弟・小笠原智一(藤沢翔陵)が注目を集めた。要所でマウンドを任され、チームはノーシードから8強に進出。こちらも“兄と違い”右腕だった。
プロ野球選手の弟に限らず、近年は投打が違う兄弟を見かけるケースが増えてきた。一種のトレンドなのかもしれない。
文=落合初春(おちあい・もとはる)