第1回大会の2006WBCにおける思い出の本塁打といえば、準決勝の韓国戦で福留孝介(当時、中日)が放った一発だろう。
日本と韓国が一歩も譲らず、6回までゼロ行進。そんな白熱した試合の均衡を破ったのが福留だった。それまで19打数2安打と絶不調だったが、今江敏晃(当時、ロッテ)の代打で登場し金炳賢の3球目を振り抜くと、打球は綺麗な放物線を描いてスタンドイン。
この本塁打が号砲となり、日本は計6点を奪って勝利し決勝に進出。まさに起死回生の一撃となった。
2009WBCでは、内川聖一(ソフトバンク)が魅せてくれた。
アメリカで行われた第2ラウンドの、これまた韓国戦。1点をリードされて迎えた2回表に、左腕の張洹三(チャン・ウォンサム)から同点のソロ本塁打を見舞った。
「点を取られた直後に取り返す」という理想的な追い上げを見せたことで、日本はその後に3本の安打を並べて逆転に成功。
「内川のホームランがなかったら……」と、思わずにはいられない試合だった。
「接戦における貴重な本塁打」という先の2試合とは、一味も二味も違う本塁打の醍醐味が堪能できたのが、2013WBC・第2ラウンドのオランダ戦。
初回の鳥谷敬(阪神)のソロ本塁打を皮切りに、松田宣浩(ソフトバンク)、内川、稲葉篤紀(当時、日本ハム)、糸井嘉男(当時、オリックス)、坂本勇人(巨人)が次から次へとアーチをかけて、大量16得点を奪った。
日本が得意とする「スモールベースボール」はどこ吹く風。7回コールド勝ちという圧勝で、まだまだ、アメリカや中南米の強豪国以外のチームとの力の差は歴然と印象づけた。大技の連発で一本勝ちといっていい勝利だった。
よもや4年後の2017WBCで、オランダと死闘を演じることになるとは、このときは誰も思わなかったのではないだろうか。
今回の2017WBCでも、中田のほかに筒香嘉智(DeNA)の2試合連続弾、小林誠司(巨人)の伏兵弾なども炸裂し、相手を意気消沈させている。
侍ジャパンの勝利とともに、これからも思い出の本塁打がどんどん誕生していくことだろう。
文=森田真悟(もりた・しんご)