正直に言おう。香川県高校3年生投手の現状を俯瞰する何とも言えない気持ちになってしまう。
香川卓摩(高松商)はセンバツ・春日部共栄戦でベストピッチを展開し、侍ジャパンU-18代表候補研修合宿にも参加したが、その後は腰・ヒジの状態を見ながらの登板に終始。四国大会前に更新した最速142キロ以上を夏に望むのはいささか酷だろう。ここは四国大会でやや状態を持ち直した最速141キロ右腕・中塚公晴のサポートに期待したい。
黒河竜司(英明)は大会前のケガがなぜか多い。昨年末の四国選抜オーストラリア遠征時の切れ味を夏のレクザムで見たい。
この2人よりもさらに深刻なのは168センチの小兵ながら昨秋県大会で141キロを出した上杉綸聖(三本松)。春前に発症した右肩・右ヒジの違和感がいまだ癒えず、夏の登板すら微妙な情勢だ。次のステップを鑑みれば無理は禁物だが、何とかマウンドで投げられる状態まで回復してほしいと願う。
四国の3年生最速右腕の加茂優太(藤井学園寒川)は春は県大会3試合連続先発も、制球に四苦八苦する場面が多かった。「下半身と上半身のタイミングを合わせたい」課題は把握しているだけに、地道な努力を積んで最後の夏にその集大成を見せてほしい。
■たとえ130キロ台でも
その一方、球速が130キロ台でも好投手は数多い。右腕では、春県大会優勝の原動力となった青山友亮(四国学院大香川西)や、サイドの王道を貫く開貴斗(志度)。鈴木康司(高瀬)や山脇歩真(藤井学園藤井2年)はバランスがいい。
左腕では実績十分の吉田啓人(大手前高松)や、昨年は左翼手で甲子園1安打の藤田翔希(丸亀城西)も面白い存在だ。
高校通算20本塁打を見据える大型捕手・永尾斗摩(尽誠学園)。1年夏は1秒8の二塁送球で魅せた岡本匠平(丸亀)。
一塁駆け抜け4秒を切る砂川太雅(藤井学園藤井)に、スイング力は目を見張る安倍総星(志度)。そしてポテンシャルの宝庫であるサンドゥ・シャーンタヒル(津田)。いずれも県内レベルを超える大器であることは間違いない。
ただ、現状の戦力評価では堅実な守備が光る大塚慶汰や持ち替えトレーニングで二塁送球2秒切りを実現させた新居龍聖といった高松商勢に、ボールを長く待てる井上治樹(大手前高松)の後塵を拝していることもまた事実。高校野球で残されたのは、あと1大会のみ。大器たちの覚醒を楽しみに待ちたい。
■左右の2年生大砲
今年は2年生野手に逸材が揃っている。代表格は左打者の多田聖一郎(三本松)と右打者の田中大貴(観音寺一)。いずれも高校通算20本塁打を超えるスラッガーである。
また、強肩の松野一也(坂出商)投手・内野手・外野手で才能を発揮する仲村光陽や、大型遊撃手として一部NPBスカウトがマークする宝来真己といった尽誠学園勢も成長に期待したい。
シード4校はセンバツ1勝の高松商を第1シードに、以下、春の県大会順位通り四国学院大香川西、尽誠学園、藤井学園藤井の順。
順当であれば走攻守にワンランク秀でる高松商の春夏連続甲子園が濃厚である。
ただし、大黒柱・香川が崩れるようなことがあれば状況は一変。
打力がある藤井学園寒川、尽誠学園、三本松、四国学院大香川西、絶対的エースがいる英明ばかりでなく、思わぬ伏兵が飛び出しそうだ。2010年英明以来となる「甲子園初出場」の表記も十二分にあり得る。