秋の明治神宮大会の覇者・明徳義塾(高知)も最強と目されるチームのひとつ。秋季大会ではエース・市川悠太が全10試合を完投し、優勝へと導いた。
ただし、センバツは簡単にはいかないだろう。初戦の相手は明治神宮大会で5対3の接戦だった中央学院(千葉)。勝ち進めば、次戦は日本航空石川(石川)と21世紀枠の膳所(滋賀)の勝者だが、順当ならば強打の日本航空石川が勝ち上がってくるだろう。
市川の気迫の投球に期待したいが、温存策が難しいブロックであることに間違いはない。それでも神宮大会で隠さなかったのは馬淵史郎監督の自信の証。「投手は仕上がった」とのコメントもいい意味で不気味だ。4強までは押し切ると見た。
明治神宮大会で準優勝した創成館(長崎)。エース左腕の川原陸にサイド右腕の伊藤大和、さらには左の七俵陸も仕上がり良好で、すばらしい投手陣を整えてきた。明治神宮大会では「史上最強」と呼ばれる大阪桐蔭を7対4で下し、勢いは十分だ。
対抗は智辯和歌山(和歌山)。秋の近畿大会では決勝で大阪桐蔭(大阪)に0対1で敗れたが、主砲・林晃汰をケガで欠くチーム状況だった。それでも秋の公式戦では7試合で58得点を記録。林もケガから復帰し、ますます手ごわい打線になるはずだ。
順当にいけば、この2校が有力。実に甲乙つけ難いが、智辯和歌山のエース・平田龍輝は昨夏の甲子園でも登板を果たしており、メンバーの甲子園経験の面で智辯和歌山が一歩リードとしたい。
大本命はもちろん大阪桐蔭。2回戦からの登場で体力を温存できることもあるが、初戦は21世紀枠の伊万里(佐賀)が相手だ。
伊万里は秋の佐賀県大会で準優勝を果たしているものの、佐賀県大会決勝では佐賀学園に2対8、九州大会初戦では沖縄尚学(沖縄)に0対8で敗れており、力関係は大阪桐蔭が上だろう。伊万里の番狂わせを見たい気持ちはヤマヤマだが、ここは大阪桐蔭からすれば「いい引き」だった。
勝ち上がっての次戦は春夏通じて初出場の明秀学園日立(茨城)、2013年春以来の出場の高知(高知)、2013年夏以来の出場の瀬戸内(広島)、3校のいずれかが相手で甲子園の経験値では大阪桐蔭に軍配が上がる。勝負の行方は当日にならないとわからないが、大阪桐蔭が勝てば「順当勝ち」と言われるだろう。
波乱含みなのは由利工(秋田)〜富島(宮崎)のブロック。実績と戦力では日大三(東京)がリードするが、仮に由利工(秋田)、三重(三重)に勝ったとしても3回戦が中1日になる日程。対する乙訓(京都)とおかやま山陽(岡山)の勝者は中2日。センバツ初出場で旋風を起こす大チャンスだ。
乙訓は秋季京都府大会で鳥羽、立命館宇治、京都翔英を立て続けに下し、近畿大会でも神港学園(兵庫)、智辯学園(奈良)に勝利。智辯和歌山とも4対5の接戦を演じた。右の川畑大地、左の富山太樹と2人の140キロ級投手を擁し、甲子園初出場を感じさせない安定感がある。ここは駆け上がりに期待したい。
明徳義塾、智辯和歌山、大阪桐蔭、乙訓の4強を予想したが、ここから先は本当に予想不可能だ。
ただ、大阪桐蔭の投打の層の厚さはずば抜けている。秋の大阪大会では粗さが残り「史上最強ではない」との声も聞こえてきたが、それでも近畿大会をあっさりと制した。
冬を経て、体力、技術だけではなく精神力も段違いになっているはず。包囲網をかいくぐっての優勝を予想したい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)