しかし、戦国時代の名将・毛利元就の「三本の矢の教え」よろしく、侍ジャパンはこのピンチをチーム一丸で乗り切った。「簡単に折れてしまう1本の矢でも、3本束ねると容易には折れなくなる」という教訓さながら、メンバーそれぞれが一層奮励努力し、チームが結束。
不安視された捕手陣では小林誠司が台頭した。二塁を守る菊池涼介はその美守で投手陣の窮地を何度も救った。そういえば、1次ラウンドのキューバ戦、送りバントを決められなかった味方のミスをカバーすべく、一塁走者の松田宣浩が鮮やかな二盗を決めた場面もあった。ミスをチーム全員でカバーしあう。理想の戦いができている。
4番・筒香嘉智(DeNA)、5番・中田翔(日本ハム)。侍ジャパンが誇る「打の心臓部」も、それは同様だ。
筒香が打ち取られたとき、4番の不発をカバーするかのように、中田が本当によく打っている。2月25日のソフトバンクとのオープニングマッチから数えて、筒香凡退直後の中田は、15打数4安打、7打点、2三振、1四球、1犠飛の成績。4安打は二塁打が1本、本塁打が3本と全て長打を放ってみせた。
このことに恐らく最初に気づいたのは、侍ジャパン公認サポートキャプテンを担当する中居正広さんだった。
もっと言えば、中田の3本のアーチはいずれも筒香が倒れて2アウトに追い込まれたときに飛び出したもの。たとえば、延長11回タイブレークまでもつれ、小久保監督が「死闘」と表現した2次ラウンドのオランダ戦だ。
難敵とみられていたオランダの先発・バンデンハーク攻略を決定づけた序盤・3回の3ラン。あの一撃も筒香が三振に倒れた後の2死一、二塁の場面で生まれている。凡退すれば攻守交替という場面で、味方の士気を高揚し、敵軍の戦意をくじく最高のパフォーマンスを見せた。
また興味深いのは、筒香が安打か四球で出塁した直後だ。このケースでは、中田のバットは一転、湿りっぱなしなのだ。5個の四球を選んでいるが、併殺打2本を含む12打数ノーヒット。
ここまで筒香、中田がともに打点を記録した試合は、1次ラウンドのオーストラリア戦のみ。決勝ラウンドでは左右の和製大砲そろい踏みの大爆発を、ぜひ期待したい!
(※データは3月19日時点のもの)
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を標榜するデータマン&野球ブロガー。2,000人以上にフォローされているTwitterアカウントは@eagleshibakawa。