早実にとってはこの夏の2戦目となる3回戦。対するは都立・秋留台。ここ10年は1勝がベストで、早実にとっては負けられない相手だ。
早実は先発に服部雅生(2年)を起用。昨夏は清宮と同じく1年生で甲子園デビューを果たし、ベスト4に貢献。一時期は今夏のエースナンバーも期待されたが、右肩痛もあり背番号10に収まった。しかし、経験は随一。早実ファンの間では人気が高い投手だ。
試合は1回表、服部が秋留台の3番・重野佑哉に四球を許すも、後続を打ち取り好発進。
1回裏から早実は猛攻を開始。先頭打者の金子銀佑(3年)が打撃妨害で出塁すると、相手のバント処理ミスの間に無死一、三塁。3番・清宮がこの日のファーストスイングで甘い変化球をとらえ、センターフェンス直撃の二塁打を放つと、さらに後続もチャンスを見逃さず打者一巡。
早実の攻撃は続き、清宮に2度目の打席が回ると今度は外角のストレートを完璧にとらえ、あわや場外の特大ホームラン。着弾点でのんびり観戦していた男性は、清宮の打球に驚くあまり、後方の草むらに転がり落ちる悲劇に見舞われた。
初回から10点リード。早々に試合を決めた早実はそのまま加点を続け、24対0(5回コールド)の大勝。清宮は第4打席でも三塁打を放ち5打席4打数3安打、1本塁打、5打点を記録した。
大敗を喫した秋留台だが、大金星もあった。2回裏の第2打席、2死三塁で清宮を迎えたが、リリーフの井上勇也(2年)がライトポール際のフライに打ち取り、清宮の今夏初の凡退をもぎ取ったのだ。
≪清宮幸太郎全打席:3回戦≫
第1打席 二塁打
第2打席 本塁打
第3打席 右飛
第4打席 三塁打
第5打席 四球
続く4回戦は明大明治が相手。毎年、3、4回戦まで勝ち進む中堅校だ。ここからは何が起こってもおかしくないゾーンに突入する。
さっそく早実は2回表に2点を先取されるピンチ。明大明治の先発・柳澤憲人(2年)は粘りの投球で、清宮を四球、死球、センターフライとかわし、5回終了まで2対2の同点で試合を進めた。
この試合で輝いたのは早実の主将・金子銀佑だった。4回には同点タイムリー、6回には勝ち越しタイムリーを放つなど、4安打3打点の大活躍。金子のバットで試合をひっくり返すと、清宮も第4打席でタイムリー二塁打を放ち、6対2で六大学系列校対決を制した。
5打席3打数1安打1打点。メディア的には少し物足りないところだったが、さすがは清宮、珍事も起こした。
死球で出塁した3回裏、センター前ヒットで一塁から激走し、三塁に滑り込むとユニホームのズボン(太もも裏)がパックリ。破れたズボンを着替えるため、試合を中断させるという珍プレー。
スポーツ紙や日曜夜のニュース番組など、さまざまなメディアが「清宮にアクシデント!?」と煽り、またもや話題を提供したのだった。
≪清宮幸太郎全打席:4回戦≫
第1打席 四球
第2打席 死球
第3打席 中飛
第4打席 二塁打
第5打席 一ゴロ
西東京大会:打率.750/2本塁打/7打点
清宮がグラウンドに登場すれば、球場にゆるやかな、堂々とした独特な空気が流れる。
打席へ向かう所作も威風堂々。球場全体を自分の時間に引き込む能力が備わっている。いわば「清宮タイム」だ。
しかし、ファンやスポーツライターの間では非常に賛否が分かれている。高校生離れした風格を褒める声もあれば、高校生らしくないという声も――。
いずれにしても「清宮タイム」は昨年に引き続き、注目ポイントであることに間違いはない。球場の雰囲気を一変させる“王者”にはプレー外でも熱視線が注がれている。「清宮タイム」に注目すれば、さらに清宮観戦が面白くなりそうだ。
文=落合初春