「金本知憲監督に思わず飛びついていた!」
7月9日、甲子園での巨人戦。9回裏に放った打球が左中間を抜けた瞬間、サヨナラ勝ちが決まり、プロ1年目で最大の歓喜を味わったルーキーの糸原健斗。
糸原はこの日、1打席目、2打席目と連続で二塁打を放ち波に乗ると、5回裏にはプロ初本塁打をライトスタンドに叩き込んだ。そして、最後の一打がサヨナラの殊勲打。4安打の固め打ちはすべて長打という活躍ぶりだった。
シーズン前半に遊撃のポジションを北條史也と競った糸原は、現段階では右投手のときはスタメンで器用されるまで成長した。
プロの水にも慣れ、結果も徐々に出てきた矢先の、経験豊富な西岡の復帰となる。ただ、西岡も全盛期の西岡ではないことは確か。
ストレートに負けず、前でしっかりたたける打撃。加えて選球眼のよさが糸原の強み。これからの西岡との遊撃争いは見ものだ。
「必死で喰らいついていく!」。まさに、これが上本博紀のスタイルだ!
173センチの小柄な上本が今季、躍動している。
7月11日、倉敷での中日戦。左翼への本塁打を含む4安打の固め打ちで、この日のヒーローとなった。4本目のヒットが出たのが5回裏。残りの打席で三塁打が出れば、あわやサイクルヒットの可能性もあったが、大量リードもあり途中交代。
この日は、金本監督曰く「上本はちょっと体力がないのでね」と、夏場を迎えてのコンデイションを考慮した交代だったが、競った試合での終盤だと守備に不安があるのは否めない……。
打率.301と阪神で唯一、打率3割超えしている上本の課題は、やはりスローイングも含めた守備力だ。
好調の上本に代えて西岡を二塁で使うという選択肢は、現段階では考えにくいが、夏場を迎え体力勝負になってくると、二塁も流動的になる可能性はある。そのとき、上本は西岡を跳ね返すことができるか。
「左打席で決勝打を打つことができた」
30歳を目前にしてのスイッチヒッターへの挑戦を続けているのが大和だ。
守備は一流。守備固め要員として生き残る道も選択できた。しかし、それをよしとせず、大和は毎日、懸命に左打席でバットを振り続けてきた。
7月12日、前半戦最後となる甲子園での中日戦。先制のタイムリーは右打席で放ち、決勝点を挙げた一打は練習を積んだ左打席から左翼前にはじき返した。
この日、大和は3本のタイムリー。金本監督は“サプライズ”と言わんばかりに喜びながら、「大和は元々勝負強い!」と褒め称えることを忘れなかった。
これまで、華麗な守備で何度もチームを救ってきた。西岡といえども、二塁、遊撃ともに守備では大和には遠く及ばない。打撃で勝負強さをより発揮できれば、二遊間どちらもこなせる大和の存在が大きく生きてくる。
西岡の復帰で二遊間は熾烈なポジション争いが繰り広げられる。
アキレス腱断裂からの完全復帰! 絵になる男・西岡にとっては、自らの活躍で広島を追い上げ、終盤の優勝争いに再度挑んでいく恰好の舞台が用意されたともいえる。
しかし、糸原、上本、大和は、たやすく西岡をヒーローとはさせないだろう。前半戦最後の3試合で彼らが見せた闘志が、これからの阪神を強くする原動力になるはずだ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。