今季、中村は「10年に1度」級の驚きのスタッツを残している。
打率はリーグ9位の.287。2013年から続く規定打席到達と打率3割超えは止まってしまったが、驚くべきは「三振と四球の関係」だ。三振53に対し、四球はその数を軽く上回る99。リーグ3位の出塁率.416を残した。
これだけの大差で「四球>三振」を記録したのは、NPBでは2006年の松中信彦(ソフトバンク、打率.324で首位打者。三振37、四球102)以来の快挙。プロ通算成績でも三振236、四球281と四球が三振を上回っている。
今、まさに変化球全盛時代を迎えている。NPBでもメジャーの影響を受け、打者の手元で微妙にムーヴする球が増え、複数球種を自在に操る投手が多くなった。
同時にパ・リーグでは年々スピードボールを武器にする投手も増えている、そのなか、中村は一流の狙撃手のごとく、卓越した選球眼と、めったに空振りしない高いバットコントロール能力で、投手の球を厳しく選り分け、「好球必打」を実践してきた。
この能力こそ、国際大会には必須のスキルになる。「一見さん」の投手との対決が多くなるなか、クセのあるフォームから投げ込んでくる外国人投手独特の球筋に対応しなければならない。この状況に、即アジャストすることを要求されるのが、国際舞台だ。
中村の侍ジャパンでの戦歴を見てみよう。2013年秋と今年春のチャイニーズ・タイペイ戦、昨年のプレミア12、今秋のメキシコとオランダとの強化試合で合計40打席。その成績は、35打数15安打、2二塁打、1本塁打、5四球。打率は驚嘆の.429! そして、三振がまさかのゼロ!
プレミア12の本大会では打率.611と驚異の働きぶりを見せ、対峙した84球のうち空振りはわずかに2球だった。メキシコ、オランダ戦でもホームラン含む7打数3安打とアピール。守備では外野の両翼に加えて、一塁での出場も可能だ。
しかし、現実には中村の選出は難しい。というのは、今回出場が決まった青木、筒香嘉智(DeNA)、秋山翔吾(西武)、内川聖一(ソフトバンク)、鈴木誠也(広島)ら外野手のなかで、センターの本職が秋山1人になるからだ。外野手がもう1名選ばれるとしたら、右ヒジ痛からの回復が万全であれば柳田悠岐(ソフトバンク)、柳田が難しい場合は、丸佳浩(広島)か大島洋平(中日)のどちらかだろう。
しかし、それがわかっていても、いや、それでも「WBCでぜひみたい! みたいんです!」と思わせる存在が、「Lefty Sniper」中村だ。
文=柴川友次
NHK大河「真田丸」で盛り上がった信州上田在住。真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴を定点観測するブログや有料メルマガ発行、ネットメディアにも寄稿。Twitterは@eagleshibakawa