実はこのウィーラー、自身がヤンキースに在籍時の2014年、田中将大の先発試合でメジャーデビューを果たしている。2打席目に左中間へ第1号本塁打を放つと、ベンチで笑顔のイチロー(当時)とハイタッチを交わしたことは、ファンの間では有名である。
そして、2015年に海を渡って楽天に移籍。当初は日本の野球に適応できず、1軍と2軍を往来した。しかし、夏場に調子を上げたウィーラーは、8月20日以降の140打席で打率.307、8本塁打、31打点の好成績をマーク。終わってみれば、チーム最多50打点の活躍をみせ、2年目の契約を勝ち取った。
今シーズンはNPBの水にすっかり慣れたウィーラー。梨田昌孝監督の信頼も厚く、攻守走のハッスルプレーでチームを牽引している。
「打」では開幕から4番に座り、打率.286、2本塁打、リーグ6位タイの12得点、同3位タイの13打点(成績は4月17日時点)。開幕カードこそ快音なかったが、3月29日以降、無安打に終わった試合は1試合のみ。この間に10試合連続安打、6試合連続打点を記録するなど、チャンスメーカーとしても、ポイントゲッターとしても機能している。今季、外国人打者の6試合連続打点は、両リーグ唯一の記録だ。
印象深いのは、状況に応じてセンターから右方向に打ち返す打撃が増えていること。昨季は引っ張る打撃が目立ったものの、今季はグラウンドを広く使い、昨季はわずか6本のライト方面の安打が、今季は早くも5本。そのうち3本が二塁打になっている。
「走」では4月2日の西武戦で、重盗時に三塁からホームへ頭から飛び込む生還劇が印象的。他にも、梨田監督のエンドランのサインにもよく応え、ランナーとしても好走塁を見せている。
「守」では球際に負けない気持ちを出したビッグプレーが多い。3月29日のロッテ戦では、左中間の飛球に対してあまりにもハッスルしすぎて、中堅手の松井稼頭央と交錯したのは御愛嬌。
チームは現在、開幕スタメンに名を連ねた岡島豪郎、今江敏晃、藤田一也の主戦級が相次いでケガで離脱中。連敗が続くなど苦境を迎えている。しかし、すっかりチームに溶け込んだウィーラーの全力プレーが、きっと楽天を救うはずだ。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。