今年のプロ野球もついに終幕。日本シリーズではソフトバンクがヤクルトを4勝1敗で下し、圧倒的な力を見せつけた。
今季のソフトバンクは、投打に巨大戦力を有し、貯金はなんと41。混戦のセ・リーグを抜け出し、何とか優勝に漕ぎつけたヤクルトに比べて、やはり地力はかなり大きい差があった。
前評判はソフトバンクが圧勝。実際にその通りの結果になったのだが、ネットでは「ソフトバンクが強すぎ。334もあり得る」という予想が、数多く見受けられた。
ここ10数年のプロ野球をコアに見続けた人たちは、この「334」という数字の羅列を見て、「なるほど、ああ〜」と思ったはずだ。しかし、ライトなファンや少年ファンたちの頭上には「?」が浮かぶことだろう。
「334」とは一体、何なのか——?
時は2005年にさかのぼる。前年にプロ野球再編問題が発生し、楽天が新規球団として誕生したこの年は、今ではおなじみとなっている「交流戦」がはじまった年でもあった。
今でこそ、過去11年の間に、10回も勝ち越しているパ・リーグが、実力的な優位を証明しているが、当時はプロ野球ファンたちもセ・パの戦力差を測りきれていなかった。
この年もパ・リーグが勝ち越したものの、105勝104敗7分で貯金1。「実力のパとは言われているけど、大したことないじゃん」。そう思ったセ・リーグ党も多かったはずだ。
そして、セ・リーグは2位・中日に10ゲーム差をつけ、87勝54敗5分で貯金33をこしらえた阪神が日本シリーズに進出。一方のパ・リーグは、84勝49敗3分、貯金25という成績でレギュラーシーズンを2位で通過したロッテが当時行われていたプレーオフでソフトバンクに勝ち、リーグ優勝&日本シリーズへの出場権を手にした。
阪神にとっては、2003年、ダイエーに3勝4敗で日本一をかっさらわれて以来、2年ぶりとなる日本シリーズ。1985年から20年のときを経て、「今度こそは日本一」と親虎メディアの存在も相まって、日本中が阪神応援ムードに染まっていった。
前評判は阪神有利だった。阪神の4番は金本知憲、対するロッテはシーズン終盤からつなぎの4番・サブローを起用していた。
MVPを獲得した金本をはじめ、5番には打点王の今岡誠、3番にはしぶといシーツがおり、主軸の差は歴然。2年前に井口資仁、松中信彦、城島健司、バルデスのダイエー100打点カルテットと善戦したことを考えれば、明らかにロッテは見劣りする——はずだった。
しかし、第1戦、シーズン終盤から精細を欠いていたエース・井川慶が打ち込まれ、1対10(千葉・7回濃霧コールド)で敗れると、2戦目もロッテのサブマリン・渡辺俊介を打てず、0対10の完敗。
甲子園に戻って再起を期したが、第3戦も福浦和也に満塁弾を食らうなど大量失点を重ね、1対10の惨敗。第4戦は接戦に持ち込んだものの、2対3で力尽き、ロッテに4タテを食らってしまった。
ロッテが史上初の3試合連続2ケタ得点を記録した一方で、阪神は日本シリーズ史上初のチーム本塁打ゼロ、史上最低防御率、史上最小得点など不名誉記録を樹立。目も当てられない最悪の日本シリーズとなってしまった。
【第1戦】ロッテ 10対1 阪神
【第2戦】ロッテ 10対0 阪神
【第3戦】ロッテ 10対1 阪神
【第4戦】ロッテ 3対2 阪神
合計スコアは「33対4」。これが転じ、「334」となり、某巨大掲示板では、ネットスラングとして定着。目も当てられない悲惨な状況を表すときや、単純に阪神ファンをからかうときに使われるようになった。
そして今シーズン、一時は全球団が貯金ゼロになったセ・リーグの優勝チーム・ヤクルトの前評判が「334もあり得る」となったわけだ。
しかし、ヤクルトは山田哲人の3打席連続ホームランなどで一矢報いて全敗は回避。合計スコアも「14対23」でネットスラングになるような惨劇にはならなかった。
それでも今年の日本シリーズが「弱体化するセ・リーグ」の象徴になってしまったことは間違いない。
一方、「334」の当事者である阪神に目を向けると、金本知憲新監督をはじめ、今岡誠、矢野燿大、下柳剛(臨時コーチ)など、屈辱にまみれた「334」のメンバーが次々と入閣している。