さて、日本のプロ野球より一足先、来週末(2月19日)にレギュラーシーズン開幕を迎えるのが、アメリカのカレッジベースボールである。日本ではほとんど実態が知られていない本場の大学野球。今回は、その概要を簡単に説明したい。
全米各地に1000校以上ある大学はレベルの高いほうから順にディビジョン1、ディビジョン2、ディビジョン3に分かれており、さらにこの中でもSEC、ACC、PAC 12、Mountain Westなど各カンファレンスに分かれている。日本でいう東京六大学リーグ、東都大学リーグ、関西学生リーグなどのようなものだと理解してもらえればいい。
レギュラーシーズンは2月中旬、北部はいまだに深い雪が残る時期に開幕し、5月中旬までの間に各チーム平均で40数試合を戦う。最初の1カ月半ほどは他カンファレンスと、そこからレギュラーシーズン終了までは同じカンファレンス内の学校との対戦が主になる。
メインは金曜(一部は木曜)から日曜日にかけて行われるウィークエンドシリーズで、各校のエース投手たちは「フライデイスターター」と呼ばれ、文字通り金曜日に先発する。土、日曜日も強い学校ならドラフト上位候補が登場する。
平日にも試合は行われるが、こちらのシリーズで先発する投手は週末のそれと比べると見劣りすることは否めない。素質はあるものの、経験の浅い1年生(freshmen)が務める場合が多い。
レギュラーシーズンの終わりには各カンファレンスの上位校の間でトーナメントが行われ、それを勝ち抜いた学校がカンファレンスの勝者となる。しかし、それで終わりではない。
各カンファレンスのチャンピオンが決まると、今度はNCAA(全米大学体育協会)がレギュラーシーズンの成績をもとに選出した64校によるトーナメントが行わる。こちらが真の全米1位を決める戦いだ。
まず、64校を4校ずつ全米16か所に分けてダブルエリミネーションで行われる「リージョナル」。次に勝ち残った16チームが8か所に分かれ、ヘッド・トゥ・ヘッドで行われる2試合先勝制の「スーパーリージョナル」。そして、それを勝ち抜いた8チームのみが出場を許される「カレッジワールドシリーズ」。
このカレッジワールドシリーズに出場できるのは本当にエリート校中のエリート校だけ。毎年ネブラスカ州オマハにて開催され、カレッジプレイヤーたちにとっては大学生活で一度は立ってみたい舞台だ。日本の高校球児にとっての甲子園と考えてもらえればいい。全米で最大のアマチュア野球のトーナメントという点でも似ている。
カレッジワールドシリーズもダブルエリミネーションで行われる。そして、勝者と敗者の各ブラケットを勝ち抜いた2チームが2試合先勝の決勝戦を行う。2015年はヴァージニア大が、創部126年目にして初となる全米チャンピオンの座を勝ち取った。
上記のフォーマットで行われる約4カ月半の戦いそのものも十分面白いが、毎年シーンをリードするドラフト上位候補に注目するのも、また醍醐味だ。2016年はフロリダ大の左腕A.J.パク、オクラホマ大の右腕アレック・ハンセン、パクのチームメイトで身体能力の高いスイチヒッターのバディー・リードをはじめ、将来のスーパースター候補がそろっている。
このように、太平洋の向こう側の大学球界も日本と同じくらい、もしかしたらそれ以上に面白い。Pac 12やMountain West などのリーグは一部の試合を無料でオンライン中継してくれるので、この春の休日の午前中は、カレッジベースボールに注目してみるのも悪くはないだろう。
文=山崎和音(やまざき・かずと)