現代のプロ野球界は「投手分業制」が確立。そして、先発なら勝利、中継ぎならホールド、抑えならセーブと、それぞれに働きぶりを示す数値がある。
ただ、ホールドは勝利数やセーブ数に比べて、馴染みが薄い。ホールドとは、リードしているか同点の状況でリリーフ登板し、その状態をキープしたまま次の投手にバトンを渡した場合に加算されるポイント。成立にいくつか条件はあるものの、中継ぎとしての務めを果たした証という考えで間違いない。
また、このホールドにリリーフでの勝利をプラスしたのがホールドポイントだ。2005年から両リーグで正式に発足し、年間最多ホールドポイントの投手は「最優秀中継ぎ投手賞」として連盟表彰される。
近年はますます中継ぎ投手の重要性が高まっており、かつての「先発でダメだったから中継ぎへ」という考えも薄まっている。そんな中継ぎの猛者たちをピックアップしてみたい。
通算ホールドポイントの歴代トップ10は以下の通りだ。
■通算ホールドポイントトップ10
1位:宮西尚生(日本ハム)☆/336ポイント
2位:山口鉄也(巨人)/324ポイント
3位:浅尾拓也(中日)/232ポイント
4位:マシソン(巨人)☆/191ポイント
5位:藤川球児(阪神)☆/189ポイント
6位:五十嵐亮太(ヤクルト)☆/185ポイント
7位:青山浩二(楽天)☆/178ポイント
8位:平野佳寿(ダイヤモンドバックス)☆/169ポイント
9位:高橋聡文(阪神)☆/167ポイント
10位:増井浩俊(オリックス)☆/165ポイント
(※ ☆は現役、成績は4月25日現在)
4月13日に通算300ホールドを達成した宮西尚生(日本ハム)。その後に稼いだホールド3と救援勝利33をプラスして、現在、通算ホールドポイント336で歴代トップを独走中だ。2008年の入団以来、昨年まで11年連続50試合以上に登板。2016年と2018年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得している。
左サンドハンドから繰り出すストレート、スライダーを中心としたキレのあるボールは今季も健在で、とくに4月に入って25日まで9試合に登板し、打者27人に対して許した安打はわずか3本のみ。この先も記録を伸ばしてきそうだ。
昨季限りで引退した山口鉄也(元巨人)が歴代2位。Y校(横浜商)出身で、高校卒業後は渡米し、アリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のルーキーリーグで約3年プレー。帰国後に、横浜(現DeNA)、楽天、巨人の入団テストを受け、育成枠で巨人に入団するという異色の経歴を持つ。
2年目に支配下選手に昇格し、3年目の2008年から2016年まで9年連続60試合以上に登板する鉄腕ぶりを見せた。もちろんこれは史上最多記録だ。初出場の2007年から2017年までに積み上げたホールドポイントは324。2009年、2012年、2013年と、最優秀中継ぎ投手を3度獲得している。2017年は18試合、2018年は登板なしと、キャリアのラストは故障がちで成績は振るわなかったが、残した功績は色あせるものではない。
ストレート、スライダーに加えて、チェンジアップ、シュートも使い、的を絞らせない投球が持ち味だった。
歴代3位は浅尾拓也(元中日)で通算232。2010年にマークした年間59ホールドポイントは、今もNPB記録として残る。さらに、2011年にも52ホールドポイントを挙げており、50以上を複数記録したのは浅尾だけ。この2年は当然ながら最優秀中継ぎ投手を獲得している。浅尾から岩瀬仁紀(元中日)につなぐ鉄板リレーは、強い時代の中日の象徴でもあった。
宮西や山口に比べて絶好調だった期間は短かったが、その分、輝きは鮮烈。スマートなルックスと相まって、特に女性ファンからは絶大な人気を誇ったのも特徴。牽制や打球処理も俊敏で、2011年にはリリーバーとしては初めてゴールデン・グラブ賞に選出されている。
4位以下から注目したいのは五十嵐亮太。今季から10年ぶりにヤクルトに復帰し、10試合で1失点、防御率0.96と好調なチームを支え、存在感を増している。
かつてヤクルトに所属していた頃(1998年〜2009年)のような160キロ近い剛速球はさすがに投げられないが、宝刀・ナックルカーブなどを駆使して打者を翻弄する投球術は当時以上。それは、結果が証明している。5月28日には40歳を迎える大ベテランだが、見た目も若く、まだまだやれる。
文=藤山剣(ふじやま・けん)