躍進の原動力は「杜のいてまえ」打線だ。梨田昌孝監督が指揮を執り、リーグ優勝を飾った2001年の近鉄のように、とにかく打線がよく打つ。驚くほどよく点を取る。
1番に茂木栄五郎を据え、2番にペゲーロを置く「超攻撃的な布陣」が面白いようにハマった。1試合平均5.42得点は、日本一になった2013年の4.36得点をも上まわる爆発力を誇る。
ホームランは開幕12試合で11本。気は早いがシーズン131本ペースだ。3点差以上を追いかけての逆転勝利が早くも2試合あるのもうなずける。
ここで、超攻撃的な今シーズンの楽天をよく表す「興味深い数字」を紹介したい。それは犠打の数だ。
2位のオリックスがすでに19個の犠打を記録しているのに対し、楽天は7個。その7本は9番を任されている「小技のデパート」嶋基宏によるお仕事。犠打失敗を含めても、バント策に従事したのは嶋、茂木、島内宏明の3人にとどまっている。
超攻撃的な采配のなかでも筆者の特に注目するのは、無死一、二塁での采配だ。
無死一、二塁は判で押したようにバント策が多くなる場面。事実、大久保博元監督が采配をふるった2015年の楽天は、この状況において53パーセントの割合でバント策を採った。梨田監督就任1年目の昨シーズンも38パーセントがバント策だった。
しかし、今シーズンは無死一、二塁からのバント策が1度もない。7度の機会のうち6度までが、確実に加点したい「3回以降での3点差以内」の接戦にもかかわらず、犠打で一死二、三塁を作りにいくケースがなく、全て強攻策に出ている。
象徴すべきシーンが4月16日にあった。大入りのKoboパーク宮城で戦った日本ハムとの3回戦だ。
この試合、最後は延長戦を制するサヨナラ勝ちを飾ったが、中盤まで押される苦しい展開だった。楽天打線はメンドーサの前にゴロ凡打を量産。4回まで散発2安打と攻略の糸口がつかめない。先発の岸孝之は日本ハムの一発攻勢に屈し、楽天が3点を追いかける戦況で5回裏の攻撃を迎えていた。
この回に初の連打が飛び出し、無死一、二塁。絶対に得点して反撃の起点にしたい場面で、打席にはバントの達人・藤田一也。
しかし、梨田監督はここでも打たせていく。結果はゲッツー。2死三塁となった後、三塁走者を呼び込む嶋のバントヒットが決まったため、1点を返すことに成功したが、嶋の機転がなければ、絶好機を無得点で終える可能性もあった。
このように「結果オーライ」となることもあるが、梨田監督の超攻撃的采配がパリーグをどこまで沸かせるのか、今シーズンの見どころとして注目したい。
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。ノムさんの「ID野球」「弱者の兵法」に感化され、イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を実施しながら、ペナントレースを追いかけているデータ好きの野球ブロガー。2,500人以上にフォローされているTwitterアカウントは@eagleshibakawa。