1年目に5勝2敗、防御率3.07という高卒ルーキーとしては上々の成績を残した高橋。
2016年は飛躍の2年目となるはずだったが……、終わってみれば4勝11敗と2年目のジンクスにハマった格好となった。
19歳の青年に期待しすぎ。そんな感も否めないが、高橋にはそれだけの素質があるのは、プロ入り前から示されている。
前橋育英の2年生エースとして挑んだ2013年夏の甲子園。初戦の岩国商戦で歴代2位の9者連続奪三振を奪い波に乗ると、完封・完投ラッシュで、初出場の前橋育英を優勝に導いた。
3年の夏は群馬大会の3回戦で敗れたが、相手がその後、甲子園でベスト8に入った健大高崎だっただけに致し方ないという面もあった。
その思いはプロ球団も同じ気持ちだったようで、負けても高橋光への高評価は変わらなかった。西武がドラフト1位で単独指名すると、契約金1億円プラス出来高5000万円で契約。1億円という契約金は松坂大輔(現ソフトバンク)や菊池雄星と同額であり、最大限の期待を受けての入団となった。
2015年のルーキーイヤーは前半こそ2軍だったが、8月2日から満を持して1軍へ昇格。
プロ入り初登板のソフトバンク戦こそ落としたものの、その後は破竹の5連勝。高卒ルーキーとしては5人目となる月間MVP(2015年8月度MVP)を獲得するなど、スタートダッシュを決めた。
2年目の今季も同様に黒星スタートからの3連勝を決めたことで、筆者を含めて西武ファンは色めき立ったが、そこから先が続かず、「勝ち負けつかず」を挟んでの8連敗。
ただ、終盤には中継ぎに回されるなど、首脳陣も起用法に関してやや混乱していた感があるので、年齢を含め、一概に高橋光は責められないだろう。
本来なら2軍に落として調整させるべきだったと思うが、2016年は一度もファームで投げることはなかった。
投手陣のやりくりに苦しんだ今季の西武だったが、そのあおりをモロに受けたのが高橋光だった。タイミング的には「不運な時代」に入団してしまったわけだ。
しかしながら、悪いことのあとにはいいことがある。
エースの岸孝之はFAで楽天に移籍してしまったが、菊池がようやくとはいえ2ケタ勝利を挙げてエースになりつつある。2015年のドラ1ルーキー・多和田真三郎は防御率こそ振るわなかったが、7つの白星を積み重ねた。
ほかにも、今シーズン途中に加入したウルフが来シーズンは頭から帯同することで、先発のコマは揃いつつある。昨シーズンよりも投手陣の負担が減ることが想像できるのは、これ以上ない朗報だ。
西武には涌井秀章(現ロッテ)のように前年の成績から一気にジャンプアップして一流の仲間入りを果たす選手もいれば、中村剛也のようにブレイクの兆しを見せながらも一度成績を落として、「ダメか……」とファンを落胆させながら、再び上昇気流に乗る選手もいる。
中村は打者だが、西武を代表する選手であるだけに、高橋光には同じような成長曲線でステップアップを果たしてもらいたい。
それができるだけの器は、確実にあるはずだからだ。
折しも2016年のドラフトでは、高橋光に似た経歴の高校生投手を1位で獲得した。
今井達也(作新学院)だ。群馬と栃木、ともに北関東の強豪校出身で、甲子園優勝投手。そして右腕。体格こそ違うが、共通点が多い。
今井も近い将来、必ず先発ローテーションに加わってくる。そのときに高橋光は、先輩として今井をしっかりと支えられるか。
いや、西武の投手事情を考えると支えてもらわねばならない。そして若き投手陣の中心となって「投手王国」を築いてほしい。
今は苦しいときだが、高橋光なら絶対にできると信じている。2年生で過酷な夏の甲子園を制した精神力がある限り。
だからこそ、声を大にして言いたい。
君はこんなもんじゃない!
文=森田真悟(もりた・しんご)