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【カラバイヨ(オリックス)インタビュー】来日直前の活躍が「野球」への高い適応力を示していた!

「久しぶり」

 1年ぶりの再会にフランシスコ・カラバイヨは人懐っこい笑顔で迎えてくれた。

 昨年の今頃、彼は高崎の球場で打席に立っていた。レフトフェンスを軽々と超える特大のホームランを打った後、他の主力選手とともに焼き肉に舌鼓を打った。

「絶対NPBでもやっていけるね」

 控えめな口調ではあったが、きっぱりと独立リーグのスラッガーは自身を評していた。初来日から5年。日本人のグループに交じっても困らないくらいの会話力をすでに身につけていたベネズエランは、2度目のジャパニーズドリームの実現を約束してくれた。


 昨シーズン、カラバイヨはルートインBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスの主砲として打率.396、33本塁打、87打点の成績を残し三冠王に輝く。そして、今シーズンは古巣のオリックスのユニフォームに袖を通している。

☆17歳で契約も、競争に敗れ、独立リーグへ

「まあ、子供のころから野球は上手だったよ。パワーはあったね」というフランキー少年は、2001年、17歳でヒューストン・アストロズと契約を結んだ。プロキャリアの最初の2年を母国・ベネズエラのアカデミーで過ごしたのち、3年目の2003年にようやくアメリカの土を踏むことになる。アドバンス・ルーキー級・マーティンスビルで打率.286、4本塁打という成績を残した。

「はじめてのアメリカでプレーだったけど、ベネズエラと同じ階級(ベネズエラのアカデミーで行われるサマーリーグもルーキー級に位置づけられている)だったし、ベネズエラからの選手もたくさんいたからね、問題なかったよ。このチームは、僕らのほかにアメリカでドラフトされた選手が混ざっていたんだ。だから十分やっていけると思ったね」


 その後、毎年のように階級を上げていき、2005年にはA級で25本のホームランを打ち、長距離砲の片鱗を見せると、2007年には若手の有望株の集まる2A級・コーパスクリスティで14本塁打を放った。

 しかし、390打数で110という三振の多さからか、球団の評価は高くなく、翌年のキャンプでリリースされてしまう。ここからカラバイヨの独立リーガー人生が始まった。

☆日本行きを薦められたのは必然!?

 2008年、独立リーグのウォーセスター・トルネードズと契約を結び、打率.313、23本塁打という好成績を残した。この頃から、カラバイヨの素質は開花し始める。

 彼がプレーしていたカンナムリーグは、MLBのピラミッドに当てはめるとレベルは2A相当と言われている。確かに2A級のチームと試合をすれば、いい勝負をするだろう。しかし、選手個々を見れば、若手の有望株、つまり技術はともかく、生きのいい選手を集めた2Aに比べ、「2A相当」の独立リーグには、見切りをつけられたベテランが多い。だから、どちらかというと、投手もパワーピッチャーというよりインサイドワーク重視の傾向がある。ここで初めて3割を記録したということは、ある意味、彼は日本向きだったのかもしれない。

 それを知ってか知らずか、この年のオフ、代理人が日本行きを勧めてきた。

「日本でやってみないか? 実績を残せば、トップリーグのNPBも夢じゃない」

 「日本」と言っても、その行先は独立リーグだった。日本にそれができて5年目を迎えようとして、その存在は国外のエージェントの知るところとなっていた。ギャラは多少落ちるが、MLBより現実的なNPBという「夢」がある、そう言う代理人の言葉に、カラバイヨはジャパニーズドリームにかけてみようと決心した。

「アメリカでは、オフになると、もうフリーだからね。次はいつ決まるかわからない。それに、一度MLBのファームは首を切られているから、マイナーに戻るのは難しいと思ったんだ」

 彼は、これ以前からメジャーリーガーも参加するベネズエラのウインターリーグでプレーしていた。チームメイトにはそうそうたる面々が控えていた。ミゲル・カブレラ(タイガース)、マーティン・プラド(マーリンズ)、エンディ・チャベス(元ナショナルズほか)、ホセ・アルトゥーベ(アストロズ)……。彼らは皆、ウインターリーグを足がかりにメジャーの舞台に羽ばたいていった。

「選手もたくさんいて、競争も激しくて、あまり試合には出られなかった」

 メジャーリーガーたちが名を連ねる中、ベンチウォーマーに甘んじていたカラバイヨにとって、もはやメジャーは遠すぎる夢になっていた。


■ライター・プロフィール
阿佐智(あさ・さとし)/1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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