8月5日に開幕した甲子園では連日、100回目の夏の舞台に立った選手たちの熱戦が繰り広げられている。このなかには、幾人かの“未来のプロ野球選手”がいる。週刊野球太郎では、2回にわたって高校時代に甲子園で相まみえたプロ野球選手たちの戦いぶりを紹介したい。後編となる今回は、最近、プロ入りした選手たちの春夏の甲子園における対決を振り返ってみたい。
今シーズンもっともブレイクした野手といえば岡本和真(巨人)。2014年のドラフト1位で智辯学園から入団し、4年目を迎えた今シーズンは開幕からスタメンに定着。2試合目で本塁打を放つと、その後も好調をキープし、4番を任されるまでになった。
その岡本が甲子園で注目されたのは、3年時の2014年のセンバツだった。初戦の三重戦で2本塁打を放ち、紛れもないドラフト1位候補という評価を得た。当然、次戦でも本塁打を期待されたが、ここで岡本の前に立ちふさがった選手がいる。佐野日大の左腕エース・田嶋大樹(オリックス)だ。
140キロを超えるストレートを武器としていた田嶋は、岡本から2打席連続三振を奪い、4打数1安打とほとんど仕事をさせなかった。また、智辯学園で2年生ながら「1番・遊撃」で出場していた廣岡大志(ヤクルト)も5打数1安打に抑え、リードオフマンの仕事をさせていない。田嶋は智辯学園打線の中心となる2人をしっかりと封じ込めた。
田嶋の粘り強い投球が実り、佐野日大は延長戦の末に5対4で勝利。準々決勝へと駒を進めた。
その後、岡本は高卒、田嶋はJR東日本を経由してプロ入りを果たす。今シーズン、2人は交流戦でプロ初対決を果たした。この対決で田嶋は、高校時代を思い出すかのように岡本から2打席連続三振を奪ってみせた。第3打席は岡本が意地を見せ、安打を放つも、軍配は田嶋に上がったと言っていいだろう。
巨人の4番として結果を出しつつある岡本は、次の機会で田嶋にリベンジできるだろうか。今後の対戦にも期待したい。
2016年夏の甲子園。注目を集めていたのは「高校ビッグ3」と称された藤平尚真(横浜→楽天)、寺島成輝(履正社→ヤクルト)、高橋昂也(花咲徳栄→広島)だった。
3校とも初戦を勝ち上がり、2回戦で早くも藤平と寺島が激突する。もちろん、この試合は寺島と藤平に注目が集まっていたが、ほかにものちのプロ野球選手が出場していた。増田珠(横浜→ソフトバンク)と安田尚憲(履正社→ロッテ)である。ここでは増田と安田の結果に目を向けたい。
下級生ながら増田は「3番・中堅」、安田は「4番・三塁」と、ともに中軸を担っていた。増田は寺島に対し4打数1安打、安田は藤平に対し3打数1安打と最低限の結果を残している。
2人とも2017年のドラフトでプロ入りを果たしたばかり。まだ、1軍での出場機会は訪れていない。しかし、超高校級の先輩投手から安打を放ったことは自信になっているはずだ。大舞台での経験を生かし、近い将来、チームの柱となることを期待したい。
昨シーズン、新人ながら中継ぎで29試合に登板し、初勝利をマークした菅原秀(楽天)。オフには、ともに大阪体育大OBという縁で、大先輩の上原浩治(巨人)の自主トレに参加したことでも話題を呼んだ。
高校時代の菅原は福井工大福井のエースとして2012年夏の甲子園に出場し、初戦で常葉学園橘(現常葉大橘)と対戦。9回2失点(自責1)完投の好投を見せ、勝利を手にしたのだが、この試合で投げ合ったのが高橋遥人(阪神)だった。
当時、2年生だった高橋は打ち込まれた先発投手の後を受けて、5回途中から登板。福井工大福井打線を無失点に封じ込めている。高橋は亜細亜大を経て2017年のドラフト2位で阪神に入団。すでに6試合に登板し、2勝(3敗)を記録。先発ローテーション入り一歩手前までステップアップした。
甲子園では1学年上の菅原に敗れたが、プロ入り後の勝ち星では、高橋が追い抜いた。縁のある2人の勝ち星争いの行方を追っていきたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)