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《野球太郎ストーリーズ》巨人2013年ドラフト1位、小林誠司。社会人でイチから技術を磨き直した強肩捕手(1)

取材・文=服部健太郎

《野球太郎ストーリーズ》巨人2013年ドラフト1位、小林誠司。社会人でイチから技術を磨き直した強肩捕手

「阿部慎之助の後継」という近年の宿題を片付けるべく、巨人がドラフト1位で指名したのは社会人の守備型捕手。しかも華やかな容姿の好青年だった。

イケメンドラフト候補生


「巨人に指名してもらい光栄です。感謝しています」

 本年度のセ・リーグ王者が1位で指名したのは24歳の社会人ナンバーワンキャッチャーだった。

 1.8秒を切ることも珍しくない驚異の二塁送球タイムに加え、コントロールも抜群。インサイドワークにも優れ、捕球技術にも定評がある。ディフェンス面における総合力の高さは、すでに1軍クラスの域に達している。

 広陵高では野村祐輔(広島)とバッテリーを組み、3年春のセンバツで8強、夏に甲子園準優勝を経験。同志社大では主将を務め、4季連続優勝の原動力に。名門・日本生命でも1年目からレギュラーを張り、都市対抗、日本選手権へチームを導いた。

 そんな「勝利を知る捕手」にインタビューをする機会が訪れた時のこと。筆者が待つ部屋に現れた小林の、俳優のような涼しげな顔立ちを目の当たりにし、「なんてイケメンなドラフト候補生なんだ!」と心の中で叫ばずにはいられなかった。

まさかの捕手転向指令


 大阪・堺市出身の小林。両親が水泳経験者という水泳一家に生まれ、1歳に満たないうちからプールが生活の一部だった。

「きっと親は水泳選手にしたかったんだと思う。練習は毎日やってましたが、正直、やらされている部分もありました」

 小学生になると友達に誘われ、週末に活動を行うソフトボールチーム「新檜尾台ファイターズ」に入団。小学校時代は水泳とソフトボールを両立していたが、「中学では硬式野球チームに入りたい。野球に専念したい」と両親に訴えたところ「野球を最後までやりぬくのなら」と水泳をやめることを快く承諾してもらった。

「ものすごくガッカリしたとは思うけど、そんなそぶりを見せることなく、僕の思いを尊重してくれた。ありがたかったです」

 中学では大阪泉北ボーイズに所属。ポジションは遊撃手だったが、3年生になると投手も務めた。「当時のスピードは125キロ弱。ピッチャーの楽しさに目覚め、高校でもピッチャー志望でいこうと決めました」。

 大阪から離れ、広島・広陵高での寮生活の道を選択した小林は、この地で野村祐輔に出会う。同じピッチャー志望の同期生。小林は「野村を完全にライバル視していた」という。

 ところが高校1年の秋、小林は捕手への転向を中井哲之監督より言い渡される。

 理由は伝えられなかった。捕手はどちらかといえばやりたくないポジションだったが、「はい」という他なかった。

 野村祐輔はこの日の出来事を克明に記憶しているという。

「試合で敗戦を喫した重苦しい雰囲気のバスの中で、中井監督が突如叫んだんですよ。『おい、小林〜! おまえ今日からキャッチャーやれ!』って。そりゃあ、びっくりしましたよ。監督以外、そんな発想、誰にもなかったと思いますから。あのバスの中のシーンとした空気はいまだに忘れられない」

野村が大きくしてくれた


 気持ちを強引に切り替え、捕手というポジションと正面から向き合った。さまになってくると、次代の正捕手候補として、野村祐輔とバッテリーを組む機会が多くなっていった。

「野村とはほんと毎日よくしゃべりました。配球論についてもしょっちゅう意見を交わし合いましたし、『いいキャッチャーとはこうだ』という意見をピッチャー目線でくれたりもした。そんなコミュニケーションを重ねる中で、どんどんキャッチャーというポジションにやりがいを感じるようになっていったんです。僕は野村がいたからこそ、キャッチャーとして大きく成長できたんです」

 3年夏の甲子園大会決勝。広陵高は8回の時点で佐賀北高から4点のリードを奪い、優勝をほぼ手中にしつつ、8回に押し出し四球と満塁本塁打を献上。球史に残る逆転敗戦を喫した試合を思い出すたび、小林の心は「たられば」の気持ちでいっぱいになるという。

「どうして、ちゃんとタイムをかけてあげられなかったのか。あの一発を打たれる前に、どうしてもっと低めに投げろというジェスチャーを野村にしてあげられなかったのか。スライダーでなく違うボールを要求していたら、結果は違っていたのだろうか…。あの試合を思い出すと、そんな思いが次から次へと湧きあがってしまう。タイムマシンで戻れたら…、とついつい思ってしまいます」

次回、「プロに入るだけでは意味がない」

(※本稿は2013年11月発売『野球太郎No.007 2013ドラフト総決算&2014大展望号』に掲載された「30選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・服部健太郎氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)

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