「当たれば飛ぶ」と誰もがその長打力を認める江越大賀(阪神)。しかし、ポジションの外野を見ると、新人王を獲得した高山俊、今季から加入の糸井嘉男、チームの要・福留孝介がレギュラーを張り、なかなか食い込めないでいる。
1軍半の選手で終わるのか。そんな岐路に立つ3年目の今季、江越は宿敵・巨人の坂本勇人を参考に打撃フォーム改造に着手した。
「お手本にしたのは坂本さんですね。自分の打撃動画などを見ながら、坂本さんみたいに、パッとトップを一発で作ってしっかり踏み込むことと、右足で粘りをつくることを意識しています。理想ですね」(江越)
その結果、初動時の腕の上下運動がなくなり、両肩がきれいに水平回転するようになった。
また、「昨年までは自分から前(投手方向)に向かっていってタイミングを合わせていた」とも話す江越。坂本を手本にすることで、打撃の間をつくることも意識できるようになった。
昨季は開幕当初に4試合連続本塁打を放つも、その後は安定感を欠き、72試合で打率.209、7本塁打、20打点と寂しい数字に終わった。しかし、オープン戦では打率.368、1本塁打、2打点と上々の成績を残し、新たな打撃フォームの効果が現れている。
だが、レギュラー奪取への壁はまだまだ高い。勝負の今季は「坂本打法」で結果を出し続け、首脳陣からの信頼を勝ち取りたい。
江越が手本にした坂本勇人(巨人)も打撃フォーム改造でさらなる進化を目指している。
先月行われたWBCに向け、バットを内から最短距離で出す打撃フォームへと変えた。
昨春の宮崎キャンプでは松井秀喜臨時コーチ(元ヤンキースほか)から「右軸で回転できるようになった方が安定する」とアドバイスを受け、打撃フォームを改造。大きく上げていた左足の上げ幅を少なくしたフォームが功を奏し、打率.344をマーク。初の首位打者のタイトルを獲得した。
それでも「継続する部分と変える部分がある」と話す坂本。成功を収めたフォームで「守り」に入ることをせず、その先を追い求めている。
WBCでは新フォームの成果が表れ、チーム2位の打率.417を記録。侍ジャパン不動の遊撃手として躍動した。
世界を相手に結果を出した新フォームで、今度は5年ぶりの日本一奪回に向けチームを引っ張る。
中村晃(ソフトバンク)は長打力アップのため、打撃フォーム改造に着手。
これまではバットを垂直に立て、腕をいったん体に引き寄せてからスイングしていたが、新フォームでは投手側にバットを少し倒して構える。そうすることで腰の回転で自然にバットが出てくるようになったという。
2013年にレギュラーに定着して以降、毎年、3割前後の打率を残し、不動のレギュラーとしてチームを引っ張ってきた。昨季は4、8、9番以外のすべての打順でスタメン出場。どの打順でも打てる便利屋としても重宝されている。
「足があるわけではないので、二塁打が欲しい。本塁打も2ケタいきたい」と目標を定める中村。3、5番とクリーンアップを担った試合もあるだけに長打力アップが必要と認識しているのだろう。
1月には2013年に最多安打で首位打者を獲得した同僚の長谷川勇也と沖縄で自主トレを行い、アドバイスを仰いだ。それも新打撃フォームに生かされている。
オープン戦では本塁打こそ出なかったが、打率.370と絶好調。今季もチームに欠かせない存在として2年ぶりの日本一奪取に向け貢献するはずだ。
このほかにも昨季のウエスタン・リーグの盗塁王・釜元豪(ソフトバンク)が俊足を生かす打撃フォームに改造。堂林翔太(広島)は大先輩の新井貴浩を意識した打撃フォームに取り組んでいる。新たな打撃フォームで生まれ変わったバッティングに注目したい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)