9月に入りペナントレースも大詰めを迎え、タイトル争いも熾烈を増している。そんな中、セパともに大記録への期待が高まっている。セ・リーグではヤクルトの山田哲人が「3割、30本、30盗塁」をほぼ確実とし、日本球界初の「40本、40盗塁」、さらには三冠王+盗塁王の可能性もまだ残っている。
一方、パ・リーグでは西武・秋山翔吾から目が離せない。9月6日のロッテ戦では2002年に松井稼頭央(現楽天)が記録した球団記録の1シーズン193安打を塗り替え、196安打に到達。このままのペースで行けば、2010年にマートン(阪神)が記録した、214安打を塗り替える可能性が非常に高い。その秋山の主な活躍を振り返ってみたい。
今季の秋山の大きな特徴は昨年まではバットを立てて構えていたのに対し、バットを寝かして構えている点だ。フォーム改造に着手した秋山はオープン戦トップの打率.459をマークし、非常に良い状態で開幕を迎える。3月27日のオリックスとの開幕戦で2安打を放つと、そこから6試合連続安打と上々の滑り出しを果たす。圧巻だったのは4月14日から16日の楽天3連戦。秋山は3試合連続猛打賞と打棒が冴え、一気に打率を上げていく。さらにその3連戦前後では6試合連続複数安打とヒットを重ねていった。結局3、4月で打率.374、40安打と結果を残し、自身初の月間MVPを受賞した。
順調に安打を打っていく秋山に、新たなる記録への挑戦が待っていた。6月3日、中日戦の第1打席で左前安打を放つと、着々と毎試合安打を重ねていく。6月は月間打率.448の数字を残して2度目の月間MVPを受賞。さらに7月3日のロッテ戦では、連続試合安打を24とし球団記録を樹立する。なかでも7月8日のオリックス戦は、8回まで4打席ノーヒットと記録ストップのプレッシャーのかかるなか、9回に打席が廻ってきた。秋山は平野佳が投じた初球の外角高めのボールをはじき返し、レフトスタンドへ飛び込む8号ソロを放ち、連続試合安打を28に伸ばした。7月11、12日の日本ハム戦で、2試合連続猛打賞をマークし31試合連続安打に。長池徳二(阪急)の持つパ・リーグ記録の32試合連続安打、高橋慶彦(広島)の持つ日本記録の33試合連続安打がいよいよ見えてきた。
そして迎えた7月14日、西武プリンスドームでの楽天戦。秋山は第1打席から三振、右飛、遊飛と凡退し、1点リードで迎えた7回の場面でも左飛に倒れ「もはやここまでか」という重い空気が球場内に漂った。
しかし9回に楽天が同点に追いつき、試合は延長戦に突入。すると延長10回、秋山に打席が回ってくる。安打に期待が集まる場面だったが、秋山は外角のボールを見極め四球を選んだ。この瞬間、秋山の連続試合安打記録は31でストップ。試合はその後、中村剛也のサヨナラ本塁打で西武が勝利。お立ち台に立った秋山は「連敗中で自分勝手なバッティングをすると流れが悪くなる。後ろで打ってくれる人もいるので我慢しました」とコメント。その献身的な秋山の姿勢に、西武ファンは感動した。
秋山にとって「惜しい」記録となったのが、6月26日の日本ハム戦だった。秋山はこの試合、初回に三塁打を放つと、3回には左中間へソロホームランを叩き込む。4回は一ゴロに倒れるが、6回には先頭打者で二塁打と4打数3安打。サイクル安打に王手を掛けた。打者一巡で第5打席が回ってくるも一ゴロに打ち取られる。そして、異様な盛り上がりの中迎えた8回、シングルヒットを打ってサイクル安打達成と行きたいところだったが、二ゴロとなってしまった。それでも、この日で猛打賞は月間8度目となり、イチローらに並ぶ10人目のプロ野球記録となった。
CS進出を懸けて日々、熱戦を続ける西武ライオンズ。不動のトップバッター秋山翔吾にかかる期待は大きい。
(文=武山智史)