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今年も不毛な論争は終わらない? 石原慶幸と會澤翼を比較する「カープ正捕手論争」を徹底検証!


 現在、広島において、ファンを二分しかねない論争が起きていることをご存知だろうか?

 その論争とは正捕手論争だ。広島は昨シーズン同様、14年目のベテラン石原慶幸と、10年目の會澤翼を併用。

 守りの石原、打撃の會澤、二律背反する2人の捕手が、正捕手のポジションを争う様相を呈している。これに対して、一部のファンが石原派、會澤派に分かれて論争を繰り広げているのだ。

 実は、この論争は昨シーズンから続くもので、広島ファンにはお馴染みだったりする。しかし、お互いをさげすむような、目を覆いたくなる発言も多く、ウンザリしているファンが多いのも事実だ。

 この不毛な争いはどうすれば終止符を打つことはできるのだろうか? 石原、會澤の成績を踏まえて考察したい。そして、日々起きるファン同士の争いを定期的に追ってみたいと思う。

試合数を二分する2捕手


 5月16日現在、広島捕手陣の出場試合数は、以下のようになっている。
( )内はスタメン出場数。

<出場試合数>
石原慶幸24試合(23試)
會澤翼 22試合(17試合)
磯村嘉孝 5試合(1試合)

 現時点で石原と會澤が、ほぼ半数ずつを分け合う起用だ。本来ならば、今年で37歳を迎えるベテランよりも、まだ28歳と若く、捕手ながら打撃がウリである會澤を固定したいのは当然だ。

 しかし、現状で會澤を固定できないのはなぜだろう? 恐らくそこには、石原との間にある守備力の差があるからだと考えられる。

 昨シーズン、リーグワーストの捕逸8個を記録した會澤。ファンのイメージのなかで、パスボールは會澤の代名詞的になりつつあるのは否めない。

 今シーズンも石原の0個に対し、22試合で2個の捕逸はリーグ3位。1位の小林誠司(巨人)、戸柱恭孝(DeNa)がそれぞれ38試合で3個という事を考えると、會澤の方がハイペースでパスボールを犯している。これは心証が悪い、と言わざるをえない。

 そんな會澤のアピールポイントは、昨季盗塁阻止率.405でリーグトップに立った鉄砲肩。しかし、今季は以下のようになっている。

<盗塁阻止率> 石原慶幸.333(リーグ2位)
會澤翼 .267(リーグ5位)

 一昨年のシーズン、肩を負傷したことで「盗塁フリーパス」とまでいわれた石原だが、ケガの癒えた昨季からは“復肩”。リーグ3位の盗塁阻止率.315を記録している。肩でも石原が高水準を出すと、守備の面で會澤の立場は苦しくなってしまう。


リードは結果論!?


 そんななか、この論争で最も熱くなるのが、リードの部分だ。捕手は経験がものをいうポジション。投手をリードする引き出しは経験の元に生まれるのは間違いないだろう。

 では、実際の数字ではどうなのか? まずはスタメンマスク時の勝敗を調べた。

<スタメンマスク時の勝敗>
石原慶幸 23試合14勝9敗
會澤翼  17試合7勝9敗1分

 勝てる投手、黒田博樹、クリス・ジョンソン等と組む機会の多い石原。そのためか勝ち星が先行しているのだろうか? では先発投手別の防御率を見てみよう。

<石原が受けた先発投手陣成績>
・黒田博樹 7試合4勝1敗 防御率2.93
・岡田明丈 1試合0勝0敗 防御率3.00
・野村祐輔 3試合2勝1敗 防御率1.66
・横山弘樹 4試合2勝1敗 防御率3.57
・ジョンソン 8試合4勝3敗 防御率2.35
合計防御率2.63

<會澤が受けた先発投手防御率>
・福井優也 6試合1勝1敗 防御率5.21
・九里亜蓮 2試合0勝1敗 防御率3.46
・岡田明丈 2試合0勝1敗 防御率7.71
・野村祐輔 4試合2勝1敗 防御率3.70
・中村恭平 1試合0勝0敗 防御率3.52
・横山弘樹 1試合0勝1敗 防御率37.80
・戸田隆也 1試合0勝0敗 防御率4.05
合計防御率5.13

 新人の横山弘樹、岡田明丈との対比を見ると、石原が新人を巧くリードしていることがよくわかる数字だ。ジョンソン、黒田が勝てるのも、石原のリードがあってこそのなのかもしれない。その点を踏まえると、現時点で捕手としての実力は石原の方が数段上に思える。

捕手離れした打撃


 捕手としては、石原に軍配が上がった形となるが、捕手とて打線の一端を担う野手。その打撃はいかなるものか? 5月16日現在の打撃成績は以下の通りだ。

<打撃成績>
石原慶幸 打率.151 0本塁打 4打点
會澤翼  打率.250 2本塁打 9打点

 投手顔負けの石原の低打率が目立つ。打撃型捕手として評価されている會澤も、この数字ではイマイチ物足りないように思えるが、セ・リーグの他球団捕手を見渡しても、打率.250を超える選手はほとんどいない。さらに2本の本塁打を放っている点を踏まえれば、會澤の打撃が捕手の中では極めて高いことがわかる。

 本塁打はおろか、長打を1本しか記録してない石原。打撃においては、石原と會澤の間には、打率以上の大きな差があると言えるだろう。

 数字上でも、2人の捕手には面白いくらいに対照的な結果が出ている。守備をとるなら石原。打撃をとるなら會澤。他球団ファンからみれば贅沢な悩みの中、どちらを正捕手に据えるのか? この不毛な論争はまだまだ続きそうだ。


文=井上智博(いのうえ・ともひろ)

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