3季連続2位の壁を超えるために――國學院大のシーズン開幕!
2012年秋に1部復帰して以来、毎シーズン勝ち点3以上獲得している國學院大だが、開幕戦白星はなんと4季ぶりだった。
昨秋日本一に輝いた駒澤大から、3戦目までもつれながらも勝ち点を挙げた拓殖大との開幕カード。2戦連続完封中だった拓殖大投手陣に、序盤から得点を奪い、優位に試合を進めていった。途中、1死満塁で柴田竜拓(4年・岡山理大付高)が右中間を深々と破る当たり(記録は二塁打)に対し、一塁走者の山?剛(2年・日章学園高)が二・三塁間で二塁走者を追い越して、アウトになるアクシデントが発生。得点は認められたもののすっきりとしない雰囲気に…。終盤にはエラーもあり、拓殖大の追い上げに冷や汗をかく展開だった。
試合後、國學院大の鳥山泰孝監督の表情は決して明るくなかった。
「まだまだ甘っちょろい野球をしている。それでも、2週目から開幕という難しい中、勝てたことが大事。悪いこともいっぱいありましたが、それ以上に収穫がありました」
2位で終えたシーズンが続いていたため、2週目からのスタートが連続していた。すでに1カードを戦い終えた相手と対戦する、という事情もあり、分が悪かった開幕戦。そんな中で挙げた白星だけに、内容以上に結果が最重要だったのだ。
★開幕白星発進! ドラフト候補が見せた活躍の裏には……
この試合、3安打の柴田は、この要因を「同級生にもらったアドバイスを実践した結果」と振り返った。
「しっかりトップを作る、引きつけるという単純なことです。リーグ3〜4日前に言われました。打てたのは新居(にい)のおかげです」。
この助言をしたのは新居晋之介(4年・國學院久我山高)。以前からベンチ入りはしていたが、試合出場は決して多くない。
▲今季1打数0安打の新居。大学初安打を期待したい
柴田は猛打賞に加え、初回にもビッグプレーをやってのけた。
1死一・二塁のピンチで打球はショート前に弾むボテボテの当たり。これに柴田が前進して捕球し、振り向きざまに二塁へ速い送球。ボールはさらに一塁へと送られてダブルプレー。相手に傾きかけた流れをぐっと引き寄せた。
正確かつ速い送球と、二塁手との呼吸が合わなければ成立しえない超ファインプレーにも、「あそこに(打球が)来るだろうと思っていたので、それ通りでした」とさらり。攻守にわたって存在感を見せつけた。
▲開幕戦から抜群のコンビネーションを見せた柴田(左)と山?
翌2戦目、1点を追う最終回に先頭から連打で同点に追いつくと、2死二塁から山?がサヨナラタイムリーを放って試合終了。連勝で國學院大は3季ぶりの開幕勝ち点を奪った。
▲拓殖大2戦目でサヨナラタイムリーの山?。28日時点で打率.467はリーグトップ
★チームを支える4年生の力
開幕前に國學院大で行われたあるオープン戦。球審にファウルボールが直撃すると、コールドスプレーを持って、すぐに駆け寄った選手がいた。村上誠也(4年・近大高専)だった。控えではあるのだが、昨年より守備から引き上げてくる選手たちを真っ先に出迎える姿が印象的だった。この日のオープン戦でもその姿は変わらなかった。
▲試合中、一塁コーチを務める村上は、代走のスペシャリストだ
しかし、先の回が終わると、一番にベンチを飛び出しているはずの姿が見えない。実はこの時、再び球審のもとへと走り、コールドスプレーを差し出していたのだった。この配慮、視野の広さに思わず、ため息が出た。
「勝つために、スタメンのみんながやりやすいようにすることを心がけています。それがベンチの雰囲気にも繋がりますし、一番に出迎えることも意識しています」(村上)
今では新居も村上に負けじと素早くベンチを飛び出し、仲間をハイタッチで迎えている。後輩の台頭により出番は多くないが、チームのために動いている様子がはっきりと目に見える存在だ。
▲真っ先にベンチを飛び出して仲間を迎える新居(左)と村上(中央)
國學院大は2カード目、中央大との試合は連敗を喫してしまった。いずれも最終回にチャンスは作るものの、及ばず勝ち点を落とした。
チームは開幕から大きなミスが続いていた。拓殖大2戦目の9回、無死二塁でバントを試みるも空振り、飛び出したランナーは三塁へと向かい滑り込んだ。アウトのタイミングであったが、拓殖大守備陣にミスが出て三塁はセーフ。同点打へと繋がったのだった。
中央大戦でも、バントの空振りからランナーが刺されたり、走塁ミスなどが続いた。開幕2連勝にチームの雰囲気は決して悪くなかった。勝ったとはいえミスもあったのだが、安心してしまった、という。さすがに連敗を喫したことに加え、思うようなプレーができなかったこともあり、ロッカールームから引き上げてくる選手は一様に暗い表情だった。
「投手は頑張ってくれたのに、自分たちが崩れて、“できて当たり前”のこともできていない」(村上)
開幕カードで勝ち点を挙げるのは3季ぶりだったのだが、昨年は春秋いずれも中央大と戦い、勝ち点を落としていた。つまり、これで対中央大戦は引き分けを挟んで6連敗。相性の悪さが露呈してしまった。
國學院大といえば、かねてより『大学野球は4年生野球』というスタイルを掲げており、新居や村上、副将を務める西浦丈司(4年・天理高)など4年生がベンチに控えている。自分のために頑張ることが、チームに好影響を与えるという考えも、そういう立場の選手もいるだろう。だが、彼らはフォアザチームの精神でそれぞれの役割を全うしている。今は結果に表れず苦しい時期だが、誰かのために動ける人間がいる組織は強い。國學院大を見ているとそんな思いが溢れてくる。
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。
記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします