2019年シーズンが始まって、約1カ月が経過。前評判どおり好発進をきめた球団、実力を出し切れていない球団など、序盤から悲喜こもごもの展開が繰り広げられている。開幕からの20試合前後を、ざっと振り返ってみよう。今回はセ・リーグ編!
(※成績は4月21日現在)
王者・広島が開幕から大きくつまずいた。2年連続MVPの丸佳浩が巨人にFA移籍、精神的支柱だった新井貴浩が現役引退と中心選手2人が抜け、開幕から5カード勝ち越しなし。戦力ダウンは織り込み済みでも、ここまでの出遅れは想定外だったかもしれない。
チーム打率.224、失策数22はいずれもリーグワースト。明るく元気で積極的なのがカープナインの持ち味でもあったはずが、気持ちが空回りしているようなプレーが目立っている。それでも、4月19日からのDeNAとの3連戦は3連勝。打率1割台に低迷している田中広輔が復調気配を見せ、ジョンソンも今季初勝利。ここからの巻き返しに期待したい。
昨年2位ながら、決して前評判は高くなかったヤクルト。開幕こそ連敗発進だったが、そこから持ち直し首位争いに加わっている。その原動力はなんと言っても打力だ。チーム得点113は、2位の巨人(94得点)を大きく引き離しダントツのリーグトップ。二塁打数もリーグトップ。本塁打数は巨人に次ぐ2位タイと好成績。さらに得点圏打率は.294と強烈な数字をマークしている、犠打がリーグ最少ということを考えれば、チャンスでの強攻策がハマりまくっているということだろう。
一方、先発投手の防御率は5点台とリーグワースト。改善が求められる。開幕投手でここまで4試合で先発し、好投もありながら未勝利の小川泰弘が白星を挙げて勢いに乗りたい。
広島から丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗、オリックスから中島裕之が加わり、メジャーからは昨季20発のビヤヌエバ、オールスターゲーム選出経験もあるリリーバーのクック、元楽天の岩隈久志らを獲得。原辰徳監督復帰のタイミングで、久々に「巨人らしい」大型補強を敢行した。
その甲斐あって開幕5連勝と好スタートを切り、19試合で貯金5と首位固めに入りつつある。切り込み隊長として打線を牽引していた吉川尚輝の腰痛によるリタイアは痛いが、内野は人材豊富なだけに、カバーできるだろう。この先は、パ・リーグ相手の交流戦が最初の関門。ここを5割で乗り切れば、4年ぶりのVも見えてきそうだ。
20試合消化した時点で9勝11敗と、なんとか踏みとどまっているDeNA。開幕投手を努めた今永翔太が4試合で2勝1敗、防御率0.87、濱口遥大が3試合で1勝1敗、防御率1.71と、昨季は成績が落ち込んだ両先発左腕が奮闘しているのは好材料だろう。
ただ、セットアッパーが不安定で、勝ちゲームを逃しているケースも少なくない。今後も守護神の山崎康晃にうまくバトンを渡せるかどうかが課題となってきそうだ。
一方の打線は、ソト、宮崎敏郎の実力者2人が打率2割前後と、まだエンジンがかかっていないこともあって、チームの打撃指標はどれをとってもリーグ3〜4位あたり。この2人が上向けば、打線にも活気が出てくるはず。
下馬評の低かった中日は貯金3で3位と健闘。攻撃面で目につくのは、どちらもリーグトップの16盗塁と18犠打。昨シーズンは、盗塁がリーグ最下位タイ、犠打が5位だったことを考えれば、与田剛新監督の目指す野球が見えてくる。その立役者が、チーム盗塁数の半分を稼いでいる大島洋平だ。打率.333と好調で、「つなぎの3番打者」として機能している。
チーム防御率3.34はリーグトップと投手陣も頑張っており、5失策もリーグ最少。攻守とも手堅い野球を実現中で、このレベルをキープできれば、7年ぶりのAクラス入りの可能性は十分だ。
昨シーズンは17年ぶりに最下位となった阪神。捲土重来を期して矢野燿大新監督を迎えたものの、4月21日に最下位転落となってしまった。成績を見ると、チーム防御率がリーグワーストの4.29で、チーム打率がリーグ5位の.235。巻き返すためには、どちらかと言えば投手陣の整備が先かもしれない。
今シーズは島本浩也、守屋功輝、ジョンソンと安定感のある中継ぎが出てきており、ドリスも7試合に登板し3セーブで自責点0。先発がゲームを作って継投に持ち込みたい。
打線では4番の大山悠輔がやり玉に上がることが多い印象だが、打率.263、4本塁打、11打点で、得点圏打率も.316と極端に悪いわけでもない。ここは首脳陣も辛抱のしどころ。21試合で借金4なら、まだまだ巻き返す時間はある。
文=藤山剣(ふじやま・けん)