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育成は山田哲人以来ようやく村上宗隆が台頭も投手育成と日本人獲得選手は不安。ヤクルトの編成採点

文=勝田聡

育成は山田哲人以来ようやく村上宗隆が台頭も投手育成と日本人獲得選手は不安。ヤクルトの編成採点
 村上宗隆の躍進が目覚ましかったヤクルト。廣岡大志も終盤に本塁打を積み重ね打撃陣に希望の光は見えた。一方で投手陣が苦しみ、序盤から大きくつまずき最下位でシーズンを終えている。

 ここ数年の編成を本誌『野球太郎』の持木編集長とカバティ西山に話を聞きながら、「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」「育成状況」のカテゴリーごとに採点してみた。

(※「日本人選手獲得」「外国人選手獲得」は2018年オフから2019年シーズンが対象)

日本人選手獲得:65点


 2018年シーズンの2位から一転、最下位に沈んだヤクルト。昨シーズンオフはFA戦線に参加しなかった。ドラフトを除く日本人選手の補強は、ソフトバンクを戦力外となった寺原隼人と五十嵐亮太、そして日本ハムとのトレードで獲得した高梨裕稔と太田賢吾の4名となった。

 そのなかでもっとも結果を残したのが五十嵐だろう。勝ちパターンというわけではないが、様々な場面で中継ぎとして起用され45試合に登板。2軍で調整する期間もあったが、40歳という年齢を考えれば十分な働きだった。

 また、太田も三塁と遊撃を中心に内野の全ポジションを守るユーティリティーぶりを発揮。打ってはチーム最多となる59試合で1番に起用され、リードオフマンとしての役割も果たした。22歳とまだ若く、これからチームを支えていく存在になりそうだ。

 一方で寺原と高梨は期待された働きができなかった。とくに高梨は5勝を挙げたものの、先発ローテーションを守ることはできず、防御率は6点台と苦しんだ。

 ドラフト組から2019年シーズンの戦力になった選手は不在。中山翔太が35試合で5本塁打を放ち大器の片鱗は見せたが、シーズンを通しての戦力とはなっていない。高卒1年目の濱田太貴も2試合に出場したが、あくまでもお試しの色が濃い。来シーズン以降への通過点である。

 このように日本人選手の補強は、2019年シーズンに大きなプラス材料にはならなかった。

 持木編集長は「高梨は、代わりに放出した秋吉(亮/日本ハム)と比ベてしまうと、ちょっと見劣りしてしまいますね。太田は頑張りましたけど、本来なら廣岡(大志)、奥村(展征)とか西浦(直亨)で埋めなくちゃいけないポジションです。大引(啓次)もいたわけですし。五十嵐も結果は残しましたが、ソフトバンクで戦力外となった選手をここまで起用しなくてはいけないのが、投手陣の苦しいところです。それに1年目からローテーションを期待した1位の清水(昇)が0勝の防御率7.27では厳しい。去年のオフだけで見ると日本人獲得選手は75点くらいですが、ここ数年というスパンで見るともう少し打つ手が合ったのではないでしょうか」と厳しい評価。

 カバティ西山は「清水は根尾(昂/中日)と上茶谷(大河/DeNA)と抽選で外して獲得した“外れ外れ1位”の選手ですので、1年目から活躍できなかったのは仕方がないことかもしれません」とくじ運の悪さもあったと指摘している。

■ヤクルトの日本人獲得選手/ドラフト
1位:清水昇(投手/國學院大)
11試合/0勝3敗/26回/奪三振24/与四球13/防御率7.27

2位:中山翔太(外野手/法政大)
35試合/打率.289(97打数28安打)/5本塁打/14打点/0盗塁

3位:市川悠太(投手/明徳義塾高)
1軍出場なし

4位:濱田太貴(外野手/明豊高)
2試合/打率.000(5打数0安打)/0本塁打/0打点/0盗塁

5位:坂本光士郎(投手/新日鐵住金広畑)
19試合/0勝0敗3H/奪三振15/与四球16/防御率5.82

6位:鈴木裕太(投手/日本文理高)
1軍出場なし

7位:久保拓眞(投手/九州共立大)
16試合/0勝0敗1H/11回/奪三振11/与四球7/防御率5.73

8位:吉田大成(内野手/明治安田生命)
13試合/打率.188(32打数6安打)/0本塁打/2打点/1盗塁

◇育成
育成1位:内山太嗣(捕手/栃木ゴールデンブレーブス)
1軍出場なし

育成2位:松本友(内野手/福井ミラクルエレファンツ)
1軍出場なし

■ヤクルトの日本人獲得選手/その他
寺原隼人(投手) ※ソフトバンクを戦力外
4試合/2勝1敗/16回/奪三振9/与四球9/防御率6.19

五十嵐亮太(投手) ※ソフトバンクを戦力外
45試合/5勝1敗4H/42.1回/奪三振33/与四球24/防御率2.98

高梨裕稔(投手) ※日本ハムからトレード
21試合/5勝7敗/78回/奪三振82/与四球34/防御率6.23

太田賢吾(内野手) ※日本ハムからトレード
90試合/打率.251(303打数76安打)/3本塁打/27打点/0盗塁

外国人選手獲得:85点


 外国人選手はスアレスとマクガフの2人を補強した。マクガフは中継ぎとして65試合に登板。シーズン途中からは守護神を任されるなど、期待以上の活躍を見せた。

 スアレスは故障が多く先発としての登板は4試合にとどまった。しかし、投球内容は悪くない。年間を通して投げることができなかったのは痛かったが、ほかの外国人投手がしっかりとしていたこともあり、大きなマイナスにはならなかった。

 ヤクルトはバレンティン(12月9日現在、ソフトバンクに移籍が濃厚と報道されるも、来季の所属先は未定)という野手の軸がしっかりしているため、投手に絞った補強を行うことができたのが大きい。優良外国人選手を1人キープできると編成面では数年に渡って楽になる。

 持木編集長は「ヤクルトはバレンティンやブキャナン、ハフと外国人選手のベースがあるので、そこまで新戦力に大きな期待をかけなくてもいい。それは編成面での強みですよね。だからスアレスとかマクガフを過度に頼らずにみすみました」とこれまでの蓄積であるバレンティンとブキャナン、ハフの存在が大きかった面を評価している。

【外国人選手獲得】
スアレス(投手)
4試合/1勝1敗/17.2回/奪三振12/与四球5/防御率1.53

マクガフ(投手)
65試合/6勝3敗11S 18H/68.2回/奪三振64/与四球22/防御率3.15

育成状況:80点


 山田哲人以降、野手の大ブレイク選手が出ていなかったが、ここにきて高卒2年目の村上宗隆が大躍進。10代や高卒2年目としての記録を次々に打ち立てていった。ここから山田哲のように毎年継続して結果を残すことができるかがカギとなる。

 一方で廣岡、山崎晃大朗、奥村といった選手たちは出番こそあるものの、レギュラーを奪うには至っていない。廣岡はシーズン終盤に本塁打を量産し自身初の2ケタ本塁打に到達。来季は頭角を現すかもしれない。

 投手陣は苦しんでいる。高橋奎二が先発ローテーションに入りつつあり、梅野雄吾が中継ぎで頑張っているが、ほかの投手たちは伸び悩んでいる。高卒、大卒、社会人出身ともに結果が出ていないのは気がかりである。

 持木編集長は「山田哲人が出てきて『高卒野手が育つ』と言われていましたが、その後が続かず危ぶまれました。そしてようやく今年、村上がすごい勢いで出てきました。一方、投手は高橋と梅野が一本立ちしそうですね。だいぶ、間は空きましたが…。本来は近年入団した大卒投手がつながなくてはいけなかったのですが、うまくいきませんでした。原樹理はエースになるのかと思いきや…」と厳しいコメント。とはいえ、やはり村上のインパクトは大きい。

 投手の育成に苦しんでいるが、今年のドライチ・奥川恭伸という金の卵をどのように育てていくか注目したい。

文=勝田聡(かつた・さとし)

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