8月4日のロッテ戦で、日本ハムの(元)クローザー・増井浩俊が6年ぶりとなる先発投手として登板した。
久々となる1軍のマウンドではあったが、結果としては5回4安打無失点とまずまずの内容。翌週8月11日、西武戦でも7回6安打2失点と十分に先発の役割を果たした。
先発投手が抑えになったり、逆に抑えが先発に転向するのは決して珍しいことではない。増井の今後の行方を占うためにも、これまでの事例を振り返ってみよう。
投手の基本は先発。アマチュア時代を含めると、そもそも初めから抑えしか経験していないプロの投手は少ないだろう。
パイオニアである江夏豊(元・阪神ほか)を始め、名だたるクローザーは先発から転向するケースが多い。現役でも松井裕樹(楽天)、西野勇士(ロッテ)、平野佳寿(オリックス)、澤村拓一(巨人)などはもともと先発だ。
クローザーではないが、吉田一将(オリックス)も今シーズンは先発からセットアッパーに転向。すでに40試合以上の登板を果たしている。
現役投手の成功例は山口俊(DeNA)が記憶に新しい。2014年に抑えから先発に転向すると、2ケタ勝利こそならなかったが防御率は前年の5.40を大きく上回る2.90。同年の6月と9月に二度も月間MVPを受賞した。
摂津正(ソフトバンク)は、勝利の方程式「SBM48」の一角として活躍していたが、2011年に先発転向すると翌年から5年連続の開幕投手となった。
このほかにも大竹寛(巨人)、涌井秀章(ロッテ)、牧田和久(西武)も先発転向組といえなくもないが、3人とも「本来は先発」というイメージが強い。特に牧田は現在、再び先発を離れてかなり難しい場面を任されていて本当にお疲れ様といいたい。
逆に、山口鉄也(巨人)、岸田護(オリックス)、藤川球児(阪神)の場合は残念ながら先発への転向が失敗だったといえる。彼らの場合は、スタミナの問題というよりも「短いイニングを全力投球」というメンタルが強く染みついているのかもしれない。
近年の状況では、先発転向の成功例は山口俊で、失敗例は山口鉄也。増井の場合はどちらの「山口」になるだろうか? 今後の投球に注目だ。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)