ドラフト候補選手の魅力をたっぷりとお伝えする「2016ドラフト候補怪物図鑑」。
今年のドラフト会議での上位指名が濃厚な目玉選手9名と、来年のドラフト会議で要注目の3名を4週間に渡って徹底解剖。新人ライターの山岸健人さんが、『野球太郎』持木秀仁編集長に根掘り葉掘り質問しまくります。
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今回取り上げるのは、今年の全日本大学野球選手権で中京学院大の初出場初優勝に大きく貢献した吉川尚輝選手(中京学院大)。大学ナンバーワン遊撃手の呼び声高い逸材の実力とは?
山岸:今年のドラフトは豊作といわれるものの、注目選手のほとんどが投手です。そのなかで吉川選手は、野手として数少ないドラフト1位候補と目されています。
持木:吉川選手は大学ナンバーワン遊撃手ともいわれている走攻守揃った選手ですが、好みの別れる遊撃手かもしれません。
山岸:それはどうしてでしょうか?
持木:守備ワークに関して、どちらかというと派手なプレーをするタイプだからです。それを華のある選手と受け取る人もいれば、雑な選手と受け取る人もいるでしょう。
山岸:なるほど……。
持木:ただ、「魅せる守備」という意味では、中京学院大の先輩・菊池涼介選手(現・広島)が前例となって高い評価を得ているので、吉川選手にも好影響はあるはずです。
山岸:吉川選手は派手なプレーをするとのことですが、実力もありますよね。なんといっても今年の全日本大学野球選手権では中京学院大の初出場初優勝に大きく貢献しました。
持木:4年生の最後に突然全国の舞台に登場したと思ったら、優勝までしてしまうほどの大活躍でした。打率も.364と打撃でも結果を残しましたね。
山岸:タイプ的にはアベレージヒッターでしょうか?
持木:そうですね。惜しむらくは右打ちだったらもっと打撃の評価も上がったんでしょうけど、50メートル走5秒7の俊足を生かして、どんどん出塁してほしいです。
山岸:二遊間を補強したいチームには吉川選手はオススメという声が聞こえてきます。
持木:遊撃だけでなく、二塁も守れるのはポイントが高いですね。「遊撃でダメなら、守備の負担の少ない三塁を守るしかない」というタイプではありません。二遊間を守れる高い守備力があります。
山岸:やはり身体能力が高いということでしょうか?
持木:身体能力が高いのはもちろんですが、体の使い方が上手です。フィールディング、スローイングも鮮やか。守備範囲も広いです。
山岸:そうなると「ポスト・菊池涼介」を担う選手になれるかもしれないですね。
持木:うーん……。今の段階では、菊池選手ほどびっくりしたプレーはしないかな。
山岸:では課題はどこでしょう?
持木:『野球太郎No.20』で、広島の苑田聡彦スカウト統括部長が吉川選手の守備について「『うまく見せよう』という気持ちが先に出ている」と話しています。本能のままにプレーをしているような菊池選手とは、そこが違いますよね。
山岸:うまく見せようとするんじゃなくて、本能のままにガムシャラにプレーした方がいいということでしょうか?
持木:もしかしたら、その方がもっとすごい守備ワークになるかもしれませんね。
山岸:とはいえ、これだけ高いレベルでまとまっていると、チームとしては使い勝手がいい選手ですよね。
持木:はい。すぐにレギュラーにはなれなくても、守備固めや代走としてベンチに控えている意味は大きいです。
山岸:そうなると、1年目のオープン戦で打撃がいまひとつだったとしても開幕1軍でベンチ入りしているかもしれませんね。
持木:その可能性は十分にあると思います。
山岸:ここまで聞いていると、かなり早い段階でプロに順応できそうですが、プロに入り後の課題はどうですか?
持木:打撃は少し苦労するかもしれないですね。
山岸:何故ですか?
持木:『野球太郎No.20』に吉川選手のバッティングフォームの連続写真が載っていますが、腰が引けているように見える部分が気になりますね。タイプ的にはアベレージヒッターなので、プロではもう少し嫌らしい打撃を要求されるかもしれません。
山岸:全日本大学野球選手権では巧みなバットコントロールで左右に打ち分けていましたが、もう一段階上のレベルへということですね。
持木:はい。一部では「集中力を欠くときがあり、プレーにムラがある」ともいわれているようです。ただ、アドレナリンが出るようなしびれる場面でのパフォーマンスは素晴らしいので、そのときの力を常に出すことができれば、プロでも安定した活躍が期待できます。
走攻守揃った吉川選手。とくに守備の評価は高いだけに開幕1軍の可能性は十分ある。課題といわれる打撃でも安定した結果を残せるようになれば、50m走5秒7の俊足を生かして盗塁王も期待できる。まだまだ成長途中の吉川選手。中京学院大の先輩・菊池選手に、追いつき追い越すようなさらなる覚醒に期待したい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)