ドラフトの順位はその後のプロ野球人生を約束するものではない。しかし期待を受けて上位指名で入団したからには、ひと花もふた花も咲かせてほしいものだ。
1位で今井達也、3位で源田壮亮、5位で平井克典を獲得した2016年のドラフトは、西武にとって当たり年といえる。だからこそこの年、2位の高評価を受けた選手にも踏ん張ってもらいたい。そう、中塚駿太だ。
身長191センチ体重103キロ。193センチ95キロの大谷翔平(エンゼルス)に引けを取らない体躯を持ちながら、中塚駿太はプロ3年間でくすぶり続けている。
体格が似ているからという理由だけで、バリバリのメジャーリーガーを引き合いに出してはいけないとはわかっている。しかしわかっているけれど、日本人離れした体格を目にしてしまうと期待せずにはいられない。
西武は例年ドラフト上位で投手を獲得しているが、その慣例だけが決め手ではないはず。恵まれた体から放たれる最速157キロの速球に魅力を感じたからこそ、“未完の大器”と呼ばれていた投手を敢然と2位指名したはずだ。
ここのところの西武の2位は2013年の山川穂高以外パッとしないが(2012年の相内誠、2015年の川越誠司、2018年の渡邉勇太朗)、埋もれる前に登ってきてほしいものだ。
そんな剛球投手・中塚が活躍できない理由は、やはり制球力に尽きる。2017年は0回2/3を投げて3与四球、2018年は2回で4与四球と“四球王ぶり”を発揮。
とくにデビュー戦はある意味で思い出深く、ポンポンと2球で2アウトを取ったと思ったら、その後は人が変わったかのようにボールを連発して3者連続四球。ファンに「ルーキーとはいえさすがドラ2」と思わせたところから、一気に奈落の底に落ちてしまった。
とはいえ制球力は一朝一夕で身につくものではなく、小手先の技術に頼ろうとすると持ち味の剛球も消えてしまいそう。かくなる上は制球力を気にするよりも、ズバズバと剛球を投げ込むために、心臓から毛が生えるくらいにメンタルを鍛えるほうが早いような気も……。暴れ馬にノミの心臓は似合わないのだから。
2月11日、野村克也氏が天に召されたが、もし達者でいたら今一番“野村再生工場”に送り込みたいのが中塚だ。「まだ活躍してないから再生じゃない」とツッコまれそうだが、プロの壁に阻まれている豪腕をどう立て直すのか興味は尽きない。
近年は高校生が150キロを投げても珍しくない時代だが、それでも157キロにはロマンがある。スピードガンが辛いメットライフドームで160キロを目指せる西武の投手は中塚しかいない。ファンにもっと夢を見せるためにも、マウンドで堂々と躍動してもらいたい。
中塚よ、君はこんなもんじゃない!
(写真は白鴎大時代)
文=森田真悟(もりた・しんご)