オープン戦が本格的に始まり、ここからは春季キャンプで結果を残した若手が、ベテランや主力組とポジションを争う勝負の1カ月となる。そんななか、ドラフト1位のルーキーがさすがの活躍を見せている。
根尾昂(中日)こそ離脱してしまったが、藤原恭大(ロッテ)、小園海斗(広島)が1軍に帯同中。オープン戦でも安打を放ち、存在感を示している。唯一の社会人ルーキーである近本光司(阪神)も安打を量産。レギュラー争いに名乗りを挙げている。
今回はそんなドラフト1位選手にまつわる成功の法則をご紹介したい。もちろん「こじつけ」ということは否定できない。しかし、それも含めての法則だと理解してもらえれば幸いだ。
広島のドラフト1位ルーキー・小園が予想以上の活躍を見せている。高卒ながら春季キャンプで1軍スタートを勝ち取ると、ファームへ降格することなく完走を果たした。3月に入ってからもオープン戦に出場し、安打を放ち、武隈祥太(西武)からは本塁打も記録した。まだまだ線は細く、田中広輔からレギュラーを奪えるほどとは言い難いが、たのしみな存在であることは間違いない。すぐには無理でも、次世代のレギュラー候補と言っても許されるだろう。
そもそも過去を振り返ると、広島の高卒ドラフト1位内野手が、過去に「外れた」ことはないのである。
過去に広島が高卒内野手をドラフト1位で獲得したのは、山崎隆造(1976年/崇徳高)、東出輝裕(1998年/敦賀気比高)、安部友裕(2007年高校生ドラフト/福工大城東高)と3人。小園は4人目だ。
赤ヘル軍団の切り込み隊長でもあった山崎は、打撃タイトルの獲得はない。しかし、1531試合で通算打率.284(4946打数1404安打)、88本塁打、477打点、228盗塁の成績を残している功労者の一人。プロ入り後に内野から外野へとコンバートされたが、現役晩年に再び内野に戻ってからもベストナインを受賞。極めて対応力の高い選手だった。
「松坂世代」の東出は高卒1年目から78試合に出場。2年目からはレギュラーを勝ち取った。2015年まで現役を続けて通算1366安打を記録。現在は打撃コーチとしてチームを支えている。
そして安部だ。なかなか目が出ず苦しいシーズンを送ってきたが、2016年から出場機会を勝ち取った。すると、翌2017年には打率.310(413打数128安打)と初めての規定打席到達を果たし、打率3割もマークしてブレイク。昨シーズンは故障もあったが、日本シリーズでは満塁弾を放ち、存在感を見せたのである。
小園も山崎、東出、安部といった先輩たちに続き、結果を残すことで「広島×高卒内野手×ドラフト1位=成功」の系譜をつなげてほしい。
阪神の外野手争いが激しさを増している。両翼には糸井嘉男、福留孝介が君臨するが、中堅は固定できていない。また、両選手ともにすでにベテラン。143試合フル出場を求めるのは少し酷である。昨シーズンもそうだったが、休養をうまく挟みながらシーズンを戦っていくのが現実的なところだろう。
つまり中堅のレギュラーといわゆる糸井、福留の休養時に出場する「第4の外野手」を巡る争いが行われているのだ。そのなかで、結果を残している一人にドラフト1位ルーキーの近本光司がいる。近本は春季キャンプ中から結果を残し、開幕スタメン候補に躍り出た。
しかし、阪神のドラフト1位を振り返ってみると、気になるデータがある。外野手のドラフト1位指名選手で大きな結果を残した選手が不在なのだ。
過去の阪神における外野手以外のドラフト1位野手を見ると錚々たる名前が並ぶ。捕手では田淵幸一(1968年/法政大)、内野手では岡田彰布(1979年/早稲田大)、今岡誠(1996年/東洋大)、鳥谷敬(2003年自由枠/早稲田大)がチームに大きく貢献している。
一方で外野手の1位指名は伊藤隼太(2011年/慶應義塾大)、高山俊(2015年/明治大)と現役の2人だけ。伊藤は代打として輝きを出しているものの、ドラ1でレギュラーになれず、代打でハマるのはいささか残念だ。高山は新人王こそ受賞したものの、その後は伸び悩んでいる。近本はドラフト1位の外野手として、歴史に名を残す活躍ができるだろうか。社会人出身の即戦力ルーキーは、1年目からレギュラーを期待される立場。ジンクスを乗り越えてほしい。
ドラフト1位指名選手とポジション、そしてチームで過去を振り返ると多くのことが見える。ドラフトの結果は5年、10年先に出るものだが、こうやって振り返ってみるのもひとつの野球の楽しみ方だ。贔屓チームの必勝パターンを探してほしい。
文=勝田聡(かつた・さとし)