5月下旬の高知県総体。スピードガンが表示される高知県立春野運動公園野球のスタンドは何度もどよめいた。
高知は早くも148キロを叩き出した1年生・森木大智を筆頭に安田祐大が139キロ。安岡拳児と侍ジャパンU-15代表の濱田世といった2年生右腕コンビが138キロ。一方、高知商では真城翔大が142キロを出し、「有効だったと思う」と上田修身監督も認める130キロ台のツーシーム、シンカーも全国レベルまで成長。さらにタテスライダーが持ち味の山田圭祐(明徳義塾)も自身初の140キロを出し、島田龍二(高知東)も「重い」が伝わる138キロを連発した。
そして高知中央ではサイド・アンダースローでも投げ分ける左腕の濱田海渡がオーバースローから138キロ。三塁手でも攻撃、守備に躍動している1年生・板谷朋生は141キロを出した。
このように「森木効果」が早くも表れた高知。現在はほぼ一塁手専任ながら総体では136キロを出した横田啓悟(土佐)や、川之江ボーイズ時代から比べて明らかにフォームがスムーズになった1年生左腕・代木大和(明徳義塾)、最速136キロでもストレートのスピン量が半端なく四国選抜オーストラリア遠征では8回で17奪三振を奪った植田ジゲン(岡豊)を含む他投手も、夏の舞台で私たちを驚かせるパフォーマンスを見せてほしい。
「これまでウエートトレーニングは冬場中心にやっていたんだけど、今年から通年で取り組むようになった」(馬淵史郎監督)
その効果は随所に現れている。俊足強打が持ち味だった古澤怜大はもちろんのこと、四国大会で長打を量産した鈴木大照(2年)などの打球スピードが増加。また、高知県総体ではケガから復帰した安田隆、今釘勝(2年)が一発を放っている。
昨年は明徳義塾・市川悠太(ヤクルト)を打ち崩し、甲子園で2勝の高知商も負けてはいない。春の県大会はケガで欠場した主将・山崎大智は県総体でバックスクリーン左まで飛ばす本塁打。
甲子園経験者の西村貫輔(2年)らに加え、俊足も光る元山晶斗(2年)。
代打の切り札的存在の川上起平らも注目に値する好打者である。
■ぜひ試合でも木製で
昨年12月に四国の精鋭20選手を集めて初開催された「四国選抜オーストラリア遠征」。普段と異なる木製バット使用で特に目を惹いたのは西村唯人(高知)だ。木のバットをしならせて広角にヒットゾーンへ運ぶ様は首脳陣をして「どの大学に行っても通用する」とうならせた。
春の大会では金属バットに苦戦している節もある西村。対戦相手に対する配慮もあるだろうが、「ぜひ一度木製バットでの公式戦打席が見たい」と思うのは筆者だけではないはずだ。
その他、長身中堅手の山?成(高知小津)や、爆発力を備える畔地遼翔(岡豊)、二塁守備の一歩目が光る高知中央の台湾人留学生・曾?磬(2年)などが夏に楽しみな野手たちである。
明徳義塾が他を一歩リード。
昨年は高知大会9連覇を逸し、センバツ出場も果たせなかったものの、2019年は公式戦負けなし。
通年のウエート導入が効果を発揮し遊撃手の合田涼真、捕手と一塁手を兼ねる鈴木大照といった2年生含む新戦力も台頭中だ。継投策濃厚の投手陣が安定すれば王座奪還は近い。
一方、高知商も県総体で自慢の打力に加えエース・真城翔大が安定。
昨年同様に第2シードから連覇を狙う状況は整った。さらに第3シード・高知も「森木効果」で猛追を期す。