まずは、5球団競合の末、ソフトバンクが獲得した田中正義(創価大=写真)。今春は右肩の故障もあり、わずか2試合の登板だったが、秋はエースとしてチームの優勝に大きく貢献。ストレートも最速155キロをマークした。
この勢いで明治神宮大会出場も決めたいところだったが、神宮大会出場決定戦である横浜市長杯で対戦した佐々木千隼擁する桜美林大戦で、8番打者にホームランを打たれるなど4回4失点でまさかのKO。試合にも敗れ、大学最後の試合は悔しさと不安を残す結果に終わった。
横浜市長杯で創価大の田中に投げ勝ったロッテ1位の桜美林大・佐々木千隼。秋のリーグ戦では5勝1敗、防御率0.91を記録し、最多勝、最優秀防御率、リーグMVPに輝いた。
勢いそのままに同大初の明治神宮大会出場も決めた。2回戦の環太平洋大戦では8回途中までノーヒットノーランの好投。決勝の明治大戦では、四球も多く5回3失点で優勝を逃したが、それでも初出場で準優勝。佐々木、桜美林大ともに株を上げる秋となった。
創価大で田中とのWエースを務めた楽天2位の池田隆英。今秋は田中を上回る成績を残した。
リーグ戦では4勝0敗、防御率0.83でベストナイン、最多勝、最優秀防御率を獲得。田中がKOされた横浜市長杯の桜美林大戦でも5回からマウンドを引き継ぎ、3回無失点。自己最速を更新する152キロもマーク。さらなる成長を期待させる秋だった。
日本ハム3位の高良一輝(九州産業大)は復活の秋となった。右足の故障で1年ぶりの公式戦登板となった今秋。復帰戦の九州工業大戦では5回3安打無失点。11個の三振を奪い、『九州のドクターK』の復活を印象づけた。
復帰2戦目の福岡工業大戦では5回途中で降板と心配する場面もあったが、3週間後の九州共立大大戦では5回無失点、8奪三振と周囲を安心させた。結果的に今秋は防御率0.00。ケガの不安さえなくなれば、プロで即戦力として期待できることを示した。
ここからは社会人の注目指名選手の秋を振り返る。オリックス1位の山岡泰輔は大きな不安を残した。日本選手権の1回戦・ヤマハ戦に先発した山岡だったが、1回2/3を被安打7、8失点の大乱調。
「スライダーのキレが悪かった」と話した通り、本調子には遠く甘い球をことごとく打たれてしまった。打者との駆け引きが巧みな山岡だが、不調時は大乱調になってしまうという不安も露見させた。
トヨタ自動車の遊撃手として今夏の都市対抗野球優勝に貢献した西武3位の源田壮亮。秋も社会人野球日本選手権に9番・遊撃手で出場。2試合で6打数2安打1打点。チームは準々決勝で日本通運に敗れ、史上4チーム目の夏秋連覇は逃したが、一定のアピールはできた。
パ・リーグの各球団1人ずつ注目選手の秋を振り返ってきたが、さらに評価を上げた選手、不安を残した選手、復活を遂げた選手と結果はさまざま。
この秋の成績がプロの来年の成績と直結するとはもちろん限らないが、田中、山岡と即戦力としての活躍が期待される投手がアマチュア最後の試合でKOされてしまったことを、心配に感じる人も多いだろう。
冬の間にできる限り課題などをクリアして、万全の状態でプロの世界でも躍動してもらいたい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)