球団史上初の3試合連続延長戦に突入し、激闘を4対3で制した4月20日のオリックス戦。4時間37分に終止符を打ったのも、この男だった。12回2死一、二塁、マウンド上は開幕10試合で防御率0.00と好投が続く塚原頌平。あとアウト1つで引き分け。シビれる土壇場で左越えウォーニングゾーン着弾のサヨナラ打を放った。
右手を痛めていたのに決勝点お膳立ての長打を放ったこともあった。同29日の敵地オリックス戦、4回守備時に一旦ベンチに下がって治療を受けるほどの右手負傷も、同点で迎えた9回はそのことを感じさせない思い切りのよい打撃を披露。平野佳寿から先頭打者二塁打を放ち勝利に貢献した。
5月9日現在、成績は打率.286、出塁率.375、11得点、9打点だ。二塁打はパ・リーグ6位、チーム2位の8本を量産する。三塁打、本塁打も各1本を記録し長打はすでに10本を数えた。
これはゼラス・ウィーラーの14本に次ぐチーム2位の本数だ。ここまでのキャリアを振り返っても長打が最も多かったのは、初の規定打席に到達した2010年の20本(二塁打17本、本塁打3本)。比較すれば、今シーズンの嶋がいかに長打量産態勢なのか一目瞭然だ。
結果を不問にし、ウォーニングゾーンより遠くに到達した外野大飛球という飛距離の視点で確認してみよう。嶋は6本。この本数も松井稼頭央や今江敏晃らベテラン勢、岡島豪郎や聖澤諒といった打撃好調組を上回り、ウィーラーの8本に続くチーム2位を記録する。飛距離もアップしているのだ。嶋といえば、年間4本塁打が最多の右打者だ。例年センターから右方向のコンパクトな打撃が多く、相手守備陣も外野を深めに守ることは滅多にない。そのこともあり、これら6本は全てヒットになった。
近年は侍ジャパンでのプレーも増えている。その中で、捕手は打てないと評価されないという思いを強くしたはず。プロ10年目の節目の年に、守備だけではなく打撃でも一皮むけた新境地をみせ、東北に再び「夢と感動」をもたらすべく、「縁の下の力持ち」の活躍が攻守両面で続く。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。