怒涛のシーズンオフ。今年もドラフトで指名を勝ち取った多くの選手たちがプロ野球の舞台に歩を進めたが、同時にほぼ同数の選手たちが各球団から「戦力外」の烙印を押され、チームを去っていった。
しかし、実績や実力を買われ、他球団に間一髪で拾われた選手たちもいる。
一筋の「蜘蛛の糸」をつかみ、這い上がる闘志に満ち溢れた彼らには、復活と躍進の期待を注がざるを得ないのがファンの情。崖っぷちで踏みとどまった「戦力外からの復活組」を紹介しよう。
■柳瀬明宏(投手・33歳)
ソフトバンク戦力外→阪神
■細川亨(捕手・36歳)
ソフトバンク戦力外→楽天
■猪本健太郎(内野手・25歳)
ソフトバンク戦力外→ロッテ
■岩崎達郎(内野手・31歳)
楽天戦力外→中日育成
■田中浩康(内野手・34歳)
ヤクルト戦力外→DeNA
■榎本葵(外野手・24歳)
楽天戦力外→ヤクルト
■柴田講平(外野手・30歳)
阪神戦力外→ロッテ
新年が明けた時点で7名の戦力外選手が他球団入りをつかんだ。
なかでも最も衝撃的だったのは細川亨(ソフトバンク→楽天)の電撃戦力外。捕手の若返りを目指すソフトバンクがコーチ転身を提案したが、現役続行の思いから固辞して楽天へ。ソフトバンクの主戦投手たちの球を受け続けてきた細川の加入で、楽天の「対ソフトバンク」の趨勢が変わる可能性がある。
ベテラン勢では田中浩康(ヤクルト→DeNA)の復活にも期待。近年は山田哲人の台頭もあり、ヤクルト内野陣での出番を減らしていたが、ベストナイン2回、ゴールデン・グラブ賞1回の実力はホンモノ。4度のセ・リーグ最多犠打も記録しており、DeNAが苦手とするバントに改革の波を起こしそうだ。
柳瀬明宏(ソフトバンク→阪神)も実績上位。ソフトバンクでは投手陣の層の厚さもあって出番を失ったが、阪神であれば1軍での出場機会もあるはず。福原忍、安藤優也など、ベテラン投手が30代後半から最後にひと伸びする土壌。カムバックにはもってこいの球団に拾われた。
ロッテは2選手を獲得。ソフトバンクをクビになった猪本健太郎は2軍での修行は完了した状態。年齢もまだ若く、戦力極厚のソフトバンクの「温情戦力外」の形だ。阪神から加入の柴田講平も環境一変でしぶとく結果を残す可能性あり。
また、上記のリスト外では、2013年に広島を戦力外になり、3シーズンにわたってBCリーグでプレーした三家和真(23歳・内野手)もロッテに入団。「下剋上」がモットーのチームで自身も駆け上がりたい。
ヤクルトは榎本葵(楽天戦力外)を獲得。2016年はオリックスから移籍の坂口智隆、日本ハムから移籍の鵜久森淳志という戦力外組2選手が、見事に1軍戦力に返り咲いた。榎本も流れに乗って大ブレイクを果たしたい。
岩崎達郎も楽天から古巣の中日に帰還して一息。育成契約だが、常勝時代の中日を知る男。チーム復興の切り札になれるか。
彼らが活躍し、放出した球団が頭を抱えるドラマチックな展開に期待したい!
文=落合初春(おちあい・もとはる)