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森田：早速ですが、西山さんの思う「これぞ会心の指名！」はどこの誰でしょう？
西山：ロッテが「外れ1位」で獲得した佐々木千隼投手（桜美林大）です。今年は、能力が高い、将来性がある投手が多く、豊作と言われていました。ですが、ドラフト1位で佐々木投手、田中正義投手（創価大）、柳裕也投手（明治大）、山岡泰輔投手（東京ガス）、寺島成輝投手（履正社高）、藤平尚真投手（横浜高）、今井達也投手（作新学院高）、吉川尚輝選手（中京学院大）という目玉選手のうち、誰かを獲得できないと厳しいドラフト結果になると思っていました。
森田：そんななか、1巡目の最初の入札では意外にも佐々木投手が呼ばれませんでした。
西山：すぐに指名されて消える思と思われていた佐々木投手が残っていたわけですから、田中投手と柳投手の競合に敗れた5球団すべてが佐々木投手に再入札したのは当然の流れです。
森田：「えっ、佐々木が残ってるの？ ラッキー！」という5球団の声が聞こえてきそうです。
西山：意中の1位指名を外してドラフト戦略が崩れかけたロッテでしたが、佐々木投手を獲得できたことで、「崖から落ちそうなところで、踏みとどまることができた」という感じです。
森田：「外れ1位」に5球団が競合は史上初のできごと。この記録も、なんら不思議ではないわけですね。
西山：はい。展開の綾で残っていましたが、佐々木投手は当然、1位指名で消えてしかるべき選手ですので。
森田：西山さんから見て、佐々木投手はどんなピッチャーですか？
西山：都立日野高から桜美林大に進学した佐々木投手は、大学2年秋から毎シーズン60イニング前後を投げて防御率は2点を超えることはありませんでした。それでいてケガもなく、好不調の波も少ないので、滅多にお目にかかれないピッチャーです。
森田：佐々木投手は、都立高出身にとっても、桜美林大にとっても初のドラフト1位選手。でも、その快挙にもうなずける実績とポテンシャルですね。
西山：首都大学リーグの出身者では、菅野智之投手（東海大→巨人）に匹敵する結果を残していますからね。特筆すべきは、佐々木投手は強豪チームの東海大と対決する立場で、この好成績を残したという点です。
森田：大学時代の菅野投手は東海大相手には投げませんからね。そう考えたら、菅野投手クラスのピッチャーになれそうです。
西山：そういうことです。あくまで可能性としては、ですが。
森田：失礼ながら、佐々木投手がドラフト1位で指名される選手に成長するとは想像できませんでした。
西山：都立日野高時代から話題にはなっていました。名前も珍しかったので印象には残っていました。でも、桜美林大に進学したときも「もしかしたらプロに入れるかな？」というくらいで、1位指名されるイメージは持てませんでしたね。
森田：当落線上の選手から、一躍注目選手になったわけですね。
西山：大学で学年が上がるにつれて、「上位ではないけれど指名はあるだろう」と評価されるようになりました。各球団のスカウトも「素材はいい」と思っていたんです。ただ、その後、4年春に一段と成長した姿を見せ、侍ジャパン大学代表に選ばれたことで一気に風向きが変わりましたね。
森田：決定的な転機が訪れたと。
西山：はい。侍ジャパン大学代表のエース格として活躍したことで評価が急上昇。「外れ1位」ながら5球団が競合という結果につながったわけです。
森田：ロッテとしては、田中投手を外しながら佐々木投手が獲得できたことで、胸をなでおろしていると思います。
西山：ロッテは涌井秀章投手と石川歩投手に次ぐ先発投手が、喉から手が出るほどほしかったはずです。二木康太投手も台頭しましたが、20代前半の先発候補をまだまだ補強したいでしょう。
森田：そこに佐々木投手というピースが加わったと。
西山：佐々木投手を獲得できたのは、来季以降、CS出場を固めつつ上位を狙うためのいい補強になりました。
森田：ロッテは昨季が4位で今季が3位。パ・リーグの「CSボーダーライン」的なチームですもんね。
西山：そこから抜け出さないといけないわけです。ロッテは中継ぎ・抑えは人材が揃ってきたので、やはり先発陣の整備が課題。落合英二投手コーチが「西野勇士投手を先発に回す」と言ったという話も出ていますが、それならそれでより強固なローテーションが形成できます。
森田：佐々木投手を獲得したことで、チームの戦略の幅が広がった感じがします。ところで、「CSボーダーライン」を抜け出さなければいけないロッテですが、今年の指名を見ていて、気になったことはありましたか？
西山：これまでのロッテのドラフトを見ると、あまり攻める印象がありませんでした。そんななか、昨年の平沢大河選手の競合指名に続いて、今年も一番人気の田中投手を果敢に指名。田中投手を外しても、また競合必至の佐々木投手に向かっていきました。
森田：そんな攻めの姿勢からは、本気で常勝チームを目指しているような気合が伺えます。
西山：そう思います。佐々木投手はそんな球団の期待に応えて、ケガなくローテーションを守って10勝を目指してほしいです。
カバディ西山氏は「ファンにとってありがたいのは田中投手ですが、チームにとってありがたいのは佐々木投手でしょう」とも言った。
もちろん両投手ともに有望ではある。しかし、ここまでケガなくコツコツと結果を積み重ねてきた佐々木投手の堅実さは魅力。安定してゲームを作ることができる投手を欲するロッテの補強ポイントにマッチするというのだ。
ある意味で、田中投手のクジを外して佐々木投手を引き当てたのは「天の配剤（はいざい）」かもしれない。そう思うと、佐々木投手がロッテでどう成長していくのか、楽しみでならない。
来週の「野球太郎ライター大推薦！ 俺たちのドラフト会心の指名」からは、週刊野球太郎ライター陣が登場。「会心の指名」をずばり言い当てていく。乞うご期待！
文=森田真悟（もりた・しんご）
