北陸新幹線の開通に沸く北陸にもう1つ、嬉しいニュースが届いた。敦賀気比がセンバツで優勝を成し遂げた。福井勢として、そして北陸勢としても春夏を通じて初めての栄冠だった。
最近の高校野球において、北陸勢の活躍が目覚ましい。昨年の夏は長野、新潟を加えた北信越代表5校すべてが初戦を突破から9連勝。そして、敦賀気比と日本文理がベスト4に進んだ。日本文理は6年前の夏、中京大中京と決勝戦を戦って、9回表に5点を返して1点差に迫った大熱戦が記憶に新しい。
北陸勢と言えば、星稜がこれまでの代表格だ。2年生エースの小松辰雄(元中日)を擁し、1976年夏にベスト4。3年生となった翌年は1回戦屈指の好カードとなった智辯学園戦で、山口哲治(元近鉄ほか)に惜しくも投げ負けたものの、印象に残る投球だった。また、1979年夏の箕島との延長18回の熱戦は、甲子園史上最高の試合と言われることも多い名勝負だった。
今回のセンバツで優勝した敦賀気比。過去には春夏11回の出場でベスト4が3回、ベスト8が2回という結果を残している。今大会の結果を加えると春が12勝5敗、夏が11勝6敗となり、通算勝利数23勝は、北陸勢としては福井商(33勝39敗)、星稜(24勝28敗)に次ぐ高校となった。
甲子園通算33勝は、北陸ではトップの勝利数であり、これまで北陸の高校野球を牽引してきたといっても過言ではない福井商。春17回、夏22回の出場で、1978年のセンバツで準優勝を果たしている。これまで、センバツの決勝に進出した北陸勢はこの一度だけだった。
この1978年のセンバツでは、1回戦で前橋の松本稔が比叡山を相手に春夏通じて初の完全試合を達成していた。その前橋と2回戦で対戦したのが福井商だった。好投手をどうやって攻略するか注目されたところ、福井商打線が爆発。17安打を浴びせ、14−0で松本を打ち崩した。この勢いで後に“カープの炎のストッパー”となる津田恒美の南陽工、前年度優勝校の箕島を撃破。箕島は翌年、春夏連覇をする全盛期だった。
しかし、福井商は決勝戦で浜松商に惜敗。今回の敦賀気比の優勝は、福井県民にとって、待ちに待った勝利だったといえるだろう。
今センバツの決勝戦は北陸の敦賀気比と北海道の東海大四という対戦だった。過去に北海道では、駒大苫小牧の夏連覇の偉業もあったが、両地域とも雪深い寒冷地で、特に春は野球をするにはハンディを背負っていると言われてきた。しかし、移動手段が便利になり、練習法の工夫、情報網の発達もあり、地域差はなくなってきていることを今回、見事に実証した。
そして敦賀気比は、福井県勢としてだけでなく、北陸勢にとって初めての「甲子園春夏連覇」に挑む。