冒頭でも触れたように、5月に入ってもなお打率を4割に乗せている近藤。
横浜高校から2011年のドラフト4位で入団した捕手だが、得意の打撃を生かして、三塁や外野として出場することも多かった。今季は主に右翼と指名打者で出場している。
2015年には、柳田悠岐(ソフトバンク)と秋山翔吾(西武)のデッドヒートに競り負けたものの、リーグ3位の打率.326(129試合出場)を記録。才能の開花を予感させたが、いよいよ今季、花開くことになりそうだ。
今季の近藤の成績を見直して興味深かったのは、実は無安打の日が多いこと。
高打率を残す選手は、毎試合コツコツと安打を重ねるイメージが強い。例えば216安打を達成した2015年の秋山は、143試合のうち無安打に終わったのは24試合。割合にするとわずか17%だ。
しかし、近藤はここまでの29試合のうち9試合が無安打。だいたい3試合のうち1試合はヒットを打っていないことになる。
普通に考えると、いつ打率が急降下してもおかしくない。しかし、打率が落ちる気配はない。この高打率は、29試合中11試合でマルチ安打を放っている「乗ると手がつけられない爆発力」と、試合数とほぼ同数の四球を選べる選球眼(29試合中28個)が支えている。
「夢の打率4割」をいつまでキープできるか、楽しみだ。
近藤に続いて取り上げる左打者は、打率.360でリーグ3位につけているT-岡田(オリックス)。
2010年に33本のアーチをかけて本塁打王に輝き、翌年以降もコンスタントに2ケタ本塁打を放っているが、期待が膨れ上がりすぎたのか、どこか物足りなく映っていた。
しかし、今季は中村剛也(西武)と並ぶリーグトップタイの9本塁打を放ちながら、首位打者も狙える打率を残している。完全復活、いや、完全にグレードアップしている。
対戦した5球団すべてから3割を打っており、なかでも首位・楽天との試合では打率.471の4本塁打と、楽天をお得意様にしているほど。今後の首位攻防戦は、T-岡田と楽天投手陣の対決に注目したい。
首位をひた走る絶好調の楽天は、打率10傑に岡島豪郎(打率.337、5位)、銀次(打率.324、8位)、茂木栄五郎(打率.314、9位)と3人の左打者がランクイン。主に7番で下位打線を支える岡島が打率のチームトップに位置している。
開幕2試合はベンチスタートながら、2試合目に代走で出場すると、巡ってきた打席でいきなりタイムリーヒットを放った。チャンスに結果を出したことで、5戦目からはほぼスタメン出場。以降は3割半ばの打率をキープしている。
他球団にしてみたら、これが7番打者の成績というのだからたまらない。上位打線とクリーンアップに神経をすり減らした後、下位にもまだ3割打者が控えているわけだから、息つく暇がない……。
楽天打線で一番警戒しなければいけないのは、「下位打線の門番」岡島かもしれない
ほかの左打者では、今や「打って当たり前」の秋山翔吾(西武)が打率.328で7位、本格化に期待がかかる駿太(オリックス)が打率.292で10位にランクインしている。
イチロー(マーリンズ)以降にパ・リーグの首位打者を獲得した強打者たちを見てみると、福浦和也(ロッテ)、小笠原道大(元日本ハムほか)、松中信彦(元ソフトバンク)、稲葉篤紀(元日本ハムほか)、鉄平(元楽天ほか)、西岡剛(阪神)、角中勝也(ロッテ)、長谷川勇也(ソフトバンク)、糸井嘉男(阪神)、柳田悠岐(ソフトバンク)という、錚々たる左打者が並んでいる(西岡は両打ち)。
それを踏まえると、左打者が並ぶ今季の打率ランキングに違和感はない。むしろ球史に名を残す左の大打者が誕生しようとしているようにも感じる。
もう一段ステップアップしてレジェンドになるのは、誰か。シーズン行く末をじっくりと見ていきたい。
(成績は5月9日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)